旅とは、目に映るものがすべてではありません。心で感じることもまた重要です。
私は最近、日本を訪れた際、好奇心からあるミッションに挑戦しました。それは、日本の温泉、フィンランドのサウナ、ロシア式サウナのバーニャ(banya)、そしてトルコの伝統的なスチームバス、ハマム(hammam)という、世界が誇る四大風呂文化を比較するというものでした。
これらはすべて、身体や心、さらには魂までも清める各国独自の入浴方法ですが、この中で最もリフレッシュできるお風呂は、いったいどれでしょうか?
1.日本の温泉―湯煙の中で過ごす静寂のひととき
私の日本旅行は、箱根からスタートしました。ここは火山の岩脈の上にある、湯煙に包まれた街です。温泉は単なる入浴の場ではなく、儀式的とも言える場所で、湯船に浸かる前に全身をきれいに洗い流し、お湯に入った後は静かに過ごすといった厳守すべき作法が存在します。
ミネラルを豊富に含む温泉水(通常、水温は40~45℃)は、疲労回復や血行促進、肌の若返りに効果があるとされています。水着の着用は禁止されていますが、これは何も身に付けない清らかな状態で温泉に入ることで、入浴がより神聖な体験になると考えられているからです。
杉が生い茂る山の合間を雲が流れていく様子を眺めながら湯に浸かっていると、日本人が温泉を「癒し」と呼ぶ理由がわかる気がしました。温泉で過ごす時間は穏やかで瞑想的で、神聖ささえ感じられました。
評価―温泉は、心を落ち着かせ、精神を鎮めるのにぴったり。
2.フィンランドのサウナ―ミニマリズムと我慢強さの融合
続いては、湖と白樺の国、フィンランドです。なんとこの国には、車よりもサウナの数が多いと言われています。
伝統的なフィンランド式サウナは、木造のサウナハウス内の室温を80~100℃に保ち、湿度は低めに設定されています。特徴的な入浴法であるロウリュ(löyly)では、熱した石(サウナストーン)の上に水をかけて蒸気を発生させ、室内の乾いた暑さを和らげます。
そして、フィンランド式サウナの真の試練といえば、体が温まった後に氷のように冷たい湖へ飛び込んだり、雪の上を転がったりして体を冷やすことです。まるで稲妻のような衝撃を受けるのですが、その爽快さと清涼感は一度経験するとやみつきになってしまいます。
フィンランド人にとってサウナは贅沢な体験ではなく、心身のバランスと静かなる強さを養うためのものです。「サウナの中ではみな平等」という言葉もあり、実際に体験してその意味がよくわかりました。
評価―身体を清め、精神を研ぎ澄ますのに最適。
3.ロシアのバーニャ―高温のサウナ、白樺の束、そして仲間とのふれあい
フィンランド式サウナを「礼儀正しい」と表現するなら、ロシアのバーニャは「情熱的」と呼ぶにふさわしいでしょう。
ロシア式サウナは、室温は60~90℃ほどですが、湿度は時には70~90%にもなるほど高いのが特徴です。そのため、室内には蒸し暑く重厚な空気が満ちていて、まるで火に抱かれているような気分になるほどです。
そして、バーニャに欠かせないのが白樺や樫の枝を束ねたヴェーニク(venik)です。これで身体を軽くたたいてマッサージするのが習慣となっています。最初は驚きますが、リズミカルに体をたたいているうちに、まるで音楽のように心地よく感じられるようになります。この独特のマッサージには、血行を促進し、身体の緊張をほぐす効果があります。
そして、全身が温まると、冷水をかぶったり氷風呂に飛び込んだりします。サウナの中は蒸気と笑い声に包まれ、お茶を飲みながらおしゃべりを楽しむのがロシア流です。バーニャは、単なる身体を洗う場所ではなく、人々が交流を楽しむ場でもあるのです。
評価―英気の回復や血行の促進、友情の絆を深めるのに最適。
4.トルコのハマム―大理石と泡マッサージを楽しむ、長い歴史を誇る蒸し風呂
最後に紹介するのは、時代と大陸を結ぶ街、トルコのイスタンブールです。
トルコ式蒸し風呂「ハマム」は、今回紹介した4つのお風呂文化の中でも、特に建築的な魅力にあふれています。ドーム型の天井や温かみのある大理石の台が設けられ、小さな星型の穴から差し込む光が特徴です。
内部の湿度は高め(80~100%)に設定されているものの、室温は45~50℃とそれほど高くありません。専門のスタッフが垢すりや洗浄、オリーブオイル入りの香り豊かな泡を使ったマッサージを施してくれるので、身体がまるで空気のように軽く感じられます。
ハマムを出ると肌はつやつやと輝き、心も軽やかになります。大理石のアーチの下に座り、甘いミントティーを飲みながら「歴代のスルタンたちもきっとこれを体験していたに違いない」と思いました。
評価―贅沢な時間を味わうのにぴったり。五感で贅沢さを楽しむことができ、歴史的魅力も満喫できる。
結局、最高の入浴体験はどれ?
どのお風呂も、その国の文化の真髄を映し出しています。
日本は静寂の中に清らかさを、フィンランドはシンプルさの中に力強さを見出しています。また、ロシアは人の温かさや仲間と共に過ごす時間の中に生を、トルコは儀式や職人技の中に美を感じています。
もう一度訪れたい場所をひとつだけ選ぶとしたら、私は日本の温泉を選びます。人気があって豪華だからではなく、「静寂」という稀有な芸術を体験できる場所だからです。安らぎを得ることが難しい世界において、静けさとは最高の贅沢ではないでしょうか。
結論
その国を理解するのに、時には言葉は必要ありません。ただその国のお風呂に入ってみればいいのです。水蒸気や汗、そして静寂が、言葉以上にその国の国民性を映し出しているのですから。
- 2025.11.07
- 水蒸気と石と静寂と―世界最高のお風呂を探す旅
