• 2017.11.08
  • ハイドパーク
幸運なことにロンドンはとても緑豊かな街で、ガーデンや緑地、花壇がそこら中にありますが、なかでも最大級で最も有名な公園がハイドパークです。
演説や議論を行う公の場としての伝統を誇るスピーカーズ・コーナーや、園内を2つに分けるサーペンタイン人造湖はよく知られています。
ハイドパークに隣接するケンジントン・ガーデンズも、かつてはこの公園の一部とみなされていました。
1728年にイギリス王ジョージ2世の妻、キャロライン王妃がハイドパークとケンジントン・ガーデンズを分離させたため、現在のハイドパークの敷地面積は300エーカー(約121ヘクタール)ほどですが、二つがつながったままであれば600エーカー(約243ヘクタール)を超えているはずです。
キャロライン王妃はハイドパークとケンジントン・ガーデンズを分離させた数年後、ハイドパークに湖を増設しました。
1814年にはこの湖で、ホレーショ・ネルソン提督の率いるイギリス艦隊がナポレオン指揮下にあったフランス・スペイン連合艦隊を撃破したトラファルガーの海戦を描写した劇が上演されました。
1824年、王室はハイドパークにグランド・エントランスを建造しました。当時のエントランスには彫刻の施されたイオニア式円柱が立ち並び、鉄と青銅でできたゲートと馬車が十分通れる幅の3本の通路がありました。1851年にはこの公園で万国博覧会が開催され、それに合わせて「クリスタル・パレス」が建設されました(その後、1936年の火事で焼失)。
王室と貴族だけが園内に入ることを許されていた時代には、シカやキツネがたくさん生息していたハイドパークは、王室一家とその友人が狩りをするための場所となっていました。
また、疫病が発生した1665年には、大勢のロンドナーが感染を避けるために園内に身を潜めました。
かつては公園の中央に馬車が楽に通れる広い通路があり、300基の街灯が道を照らしていました。
そのように多くの街灯が設置された背景には防犯上の理由がありました。貴族が帰宅した日没後は入園を管理する者がいなかったため、公園内の暗闇には強盗や犯罪者が大勢潜み、怪しげで危険な場所と化していたのです。
しかし、1800年代の終わりに「公園政策法(Parks' Policy Act)」が制定されると、ハイドパークは人が集まり、自由に表現できる場と定められたため、スピーカーズ・コーナーが設けられ、誰もが一日中自由に入園できるようになりました。
その後今日に至るまで、このスピーカーズ・コーナーは、大抵は観光客や華やかな通行人に占拠されてはいますが、演説や弁論を行う人々に利用され続けています。
第二次世界大戦中は、市民の台所を支えるために園内でジャガイモが栽培されました。また、この公園は女性の権利向上を目指す婦人参政権運動の集会がよく開かれていたことでも有名です。現在もデモ行進や集会の場となっていて、特に温暖な夏の間は重要なイベントも数多く開催されます。
クリスマス当日にはサーペンタイン湖で、出場者のほとんどが60歳以上という特別な水泳大会「ピーター・パン・カップ」が行われます。
大会名称が皮肉に聞こえるかもしれませんが、寒さをものともせず湖で泳ぐ出場者の勇敢さを考えれば納得のいくものです。
サーペンタイン湖の南側には、2004年に建設された石造のウェールズ公妃ダイアナ記念噴水があります。また、湖の東南方向にはホロコースト犠牲者の記念碑とロンドン同時多発テロ犠牲者の記念碑がそれぞれ建てられています。
園内にはさまざまな種類の苗木や樹木が植えられたローズ・ガーデンもあります。
現在、公園の隅にある2つの凱旋門のうち、東南にあるのがウェリントンアーチで、北東にあるのがメインエントランスとなっているマーブルアーチです。
公園の内外に並ぶショップや競技場、バー、遊び場、リラクゼーションエリア、レストランにはサーペンタイン湖を見渡せるものもあります。
春の終わりや夏には、この湖で泳いだり、デッキチェアで日光浴をしたり、桟橋からダイビングすることもできます。


植物園


ダイアナ妃の記念プレート



ダイアナ妃に捧げられた噴水



ピーター・パン像

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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