• 2020.10.23
  • ボーンチャイナはイギリス生まれ!
英国磁器は、アンティークや磁器のコレクターや熱心な愛好家によく知られている存在です。というのも、ヨーロッパで最も古い焼き物工房があったのがこの国(正確にはスタフォードシャー)だといわれているからなのですが、それだけではありません。最も歴史があり著名な磁器ブランドメーカーの数々が創られたのも、そして世界で最初のボーンチャイナが生まれたのも、この地なのです。(中国生まれだと思う人もいるでしょうが、実は違うんです!)
私のガールフレンドは磁器の「コレクター」なのですが、彼女が焼き物に親しむようになったのは、屋台が立ち並ぶポートベロー通りを歩いていたときに、カップやお皿に描かれた田園や花の風景画に魅了されたことがきっかけでした。その後、彼女は、さまざまな記事や資料を読んで磁器メーカーや、磁器の絵柄、絵付け、それから中国磁器、ボーンチャイナと磁器、マヨルカ焼などの違いについて調べることにしました。
スタフォードシャー磁器とは、最古の磁器が生産された場所というだけでなく、塩釉(ソルト・グレーズ)などの多種多様な磁器の仕様や製品も意味しています。塩釉は磁器というよりは、中世にドイツのラインラントで生まれたテラコッタ(素焼きの焼き物)の一種です。
この炻器(陶器と磁器の中間的な焼き物)は、焼成中の高温時に、食塩を窯の中に投げ入れて表面に特殊なガラス状の模様を付けたもので、オレンジの皮のような独特の外見を持つテラコッタです。
この塩釉の焼き物は、通常、やや光沢を持った温かみのある茶色か青色に仕上がります。
この独特な焼き物の製造は17世紀後半のイングランドで始まりましたが、同時代のドイツ製品と類似していることから、その歴史はゲルマン系の陶芸家から始まった可能性が高いと考えられています。塩釉の陶磁器の著名なイギリスの生産者といえば、17世紀に創立されたフラムポタリーのドワイト卿の存在も忘れてはいけません。
スタフォードシャーで生産されるもう一つの代表的な陶磁器といえば、クリームウェアでしょう。白地に鉛の入った釉薬をかけて作られる、この洗練されたクリーム色の磁器は、フランスではファイアンスフィーヌ(faience fine)、ドイツとイタリアではイングリッシュアースンウェア(English earthenware)という名で知られています。この陶磁器は17世紀半ば、スタフォードシャーの陶工たちによって生産されるようになりました。陶工たちは塩釉の焼き物の素材と技術を厚みの薄い新たな製品に結集し、薄い白地に美しいガラス状の鉛の釉薬をかけ、この陶器を生み出しました。出来上がった陶器は日用品に適していたため、塩釉の焼き物にとって代わり、18世紀の終わりまで大流行しました。
シダレヤナギの図柄は、これらのシノワズリー(中国風の美術様式)のなかで最もよく知られ、盛んに使われたデザインです。
スタフォードシャー磁器は、特有の装飾を施した、白と青を基調とする磁器の代名詞にもなっています。
古代の中国の磁器はもともと無地で、青か緑がかった色味の単色だったので、陶芸美術ではさらに美しいものを作り出そうとすぐさまに技術が磨かれ、白地に青の絵柄が発展しました。
青の絵具には一般的に酸化コバルトを用い、さまざまなテクニックが応用されています。
したがって、ヨーロッパに輸入され、最初に高い評価を受けた中国磁器は白地に青の装飾が施されたものでした。その後、長い年月をかけて製造技術と装飾が模倣されていったのです。
マヨルカ焼の多くもまた、その独特な自然の色味を残しながらも、シノワズリーの流行によって色彩の模倣や中国磁器の意匠の複製が行われるようになりました。
18世紀後半には、ここで作られた製品の多くは英国磁器がたいへん好まれたアメリカの市場に向けて輸出されました。
ボーンチャイナはイングランドで発明され、調整過程で陶土にカオリンとペグマタイトの他に骨灰かリン酸塩を適度な割合で加えていたために、この名で呼ばれるようになりました。
ペグマタイトは地元イングランドで、特にコーンウェルで採掘されています。
ボーンチャイナに含まれるカオリンの割合は硬質の磁器に比べてかなり低く、やわらかい磁器の特色ですが、極めて低い温度で焼成されます。


特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 年齢子(ねずみ)
  • 性別
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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