• 2021.02.19
  • マーマイト~大好きか、大嫌いか
このブログは気軽な感じで進めていこうと思っていたはずなんですが…最近のトピックはブレグジット(英国のEU離脱)やコロナのことばかりで、「癒し」になるようなお話があまりできていなかったようです。というわけで、今日は、まさにイギリスならではの私のマーマイト体験談をお話ししたいと思います。
ご存じない方のために説明しておくと、マーマイトという食品は、ビールを製造したときの残り物から、正確に言うとビールの発酵樽の底から掻き取った沈殿物から得られた酵母エキスを主原料とし、このほかに塩や濃縮野菜ジュース、ビタミンB12などのビタミン類、葉酸、さらにセロリやタマネギなどの天然香料を加えて作られたものです。
色はほぼ黒色といっていいくらい濃い茶色で光沢があり、ベトつきは少なめ、粘り気のかなり強いスプレッドです。
イギリス国内ならどのスーパーでもお目にかかれますし、イギリスの「立派な」家庭なら(もちろん冗談です)食料品用の戸棚には必ずマーマイトがあるはず。イギリスに来て、この存在に気づかないなんてまずあり得えない、そんな食品なんです。
「大好きか、それとも大嫌いか!」(Love it or Hate it!)イギリスではそんなキャッチコピーで広告宣伝されていますが、まさしくその通り!ハマるほど好きになるか、一生ずっと嫌いになるかは、最初の一口が分かれ道。好きか嫌いかは真っ二つに分かれ、その中間はないようです。
資料などによると、ドイツの科学者がビール製造時に出る副生成物から酵母エキスを合成できることを発見してそれが食用になることを知り、20世紀に入ってマーマイトがイギリスで最初に作られたそうです。
「食べられる」は私にとっては必ずしも「おいしい」とはならないようですが…このことについては後ほど。
マーマイトは製造開始から数年後には大好評を得て、その後、栄養上のメリットが非常に大きいことからイギリスでも指折りの人気商品となりました。
また、ビタミンB群とミネラルが豊富なため、第一次世界大戦中には栄養補給品として兵士たちはマーマイトの摂取を強く勧められていたようです。これは納得ですね。持ち運びが簡単な高濃度の栄養補給品で、長期保存が可能。戦時中の食糧に適した特性を持っていたことは確かです。
さて、おわかりの方もおられるでしょうが、商品名「マーマイト」(Marmite)は実は英語ではなくフランス語を語源としています。これは、昔、このスプレッドがフランス語でマルミット(marmite)と呼ばれる陶器の壺で売られていたことに由来しています。商品ラベルに壺の絵が描かれているのは、そんな由来があるからなんですね。
イギリスでは普通、朝食のトーストに塗って食べます。パンにバターを少々、その上に厚さ1mm程度マーマイトを(パン全面を覆うように)塗って食べています。
中にはこれでもかというくらいマーマイトをのせる人もいますが、これは「体にとても悪い」だけでなく、なにやら不快な感じさえします。というのもマーマイトは塩分(ナトリウム)含有量が非常に高いので、血管が詰まりやすくなる可能性があり、過度に摂取し続ければ健康上の重大な問題を生じかねないからです。
もちろん、私も試食したことがありますが、残念ながら「大嫌い」派に入るかと…。
最終的にはシチューやオムレツの風味づけに入れたり、一度はスープを作るときにも使ったりもしましたが、マーマイトを一ビン買ったのはそのときだけでした。
もう二度と買うことはないでしょう!
100%植物性の食品なんですが、かすかにお肉の風味があり、塩気が強いマーマイト。海外やイタリアの友人に「どんな味?」と尋ねられたときは大抵、「ストックキューブをスプレッドにしたみたいな味だよ」と答えています。
オーストラリアやニュージーランドでは「ベジマイト」と呼ばれるスプレッドが売られているそうですが、イギリスのマーマイトに似て非なるこのアイテム、マーマイトとは永遠の「ライバル」のようですね。
どちらも主原料は酵母エキスですが、そこに足される植物エキスと天然香料が異なるため、風味も微妙に違っているのでしょう。
イギリス人がベジマイトよりも幼少期から味に慣れたマーマイトを好むというのはイギリス文化の一つのように思えます。オーストラリア人やニュージーランド人がベジマイトを好むのも同じ理由からなんでしょうね。


同居人の食料品の棚に並ぶスプレッドの中にもマーマイトのビンが

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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