イギリス料理はイタリア料理とは別物で、ミートパイやフィッシュアンドチップスなど美味しい料理がいろいろあります。でも、イタリア料理となると、イギリスのアレンジにはちょっといただけないものが…。
もちろんイギリスでも、イタリア料理はいつもとっても美味しいです。あまり伝統料理とは言えないメニューが多かったり、元々のレシピからかけ離れた料理もあったりはしますが。
さて、イギリスに初めて着いて最初に変だと気づいたのは、ケチャップをかけたパスタでした。
イタリアでは普通、パスタはトマトとバジルで調理しますから赤、白、緑と国旗を模した仕上がりになり、イタリア人はこうした料理の伝統を守っています。
ですから、パスタにケチャップ(しかもあの後味の甘さ)なんて、ありえないんです!
イギリスでイタリアンパスタと言えば、リピート率の高い料理の中で象徴的な一品は、元祖レシピから最大限アレンジされた、最もよく調理されているカルボナーラです。
正真正銘のカルボナーラは卵黄とペコリーノチーズ、パルメザンチーズとベーコンを使いますが、ここロンドンでは生クリームとオニオン、パセリ、ベシャメルソース、ズッキーニを使い、これでもかというくらいにクリーミーな一品になっています。
チキンを使ったイギリス風カルボナーラ
もう一つ、イギリスに来て気づいたのは、食事中にメイン料理と一緒に、あるいはたらふく食べた後にカプチーノを飲む習慣です。イタリアでは朝、食事と一緒に飲むだけで、午後に口にすることはありません。
また、フェットゥチーネ・アルフレードはまさしくアメリカ人考案のアレンジになっていると思っていましたが、イギリスでも人気のメニューです。誰かに質問してみたいです。「ところでアルフレードって誰なの?」
実はイタリア人も知らないこの一品、他国ではイタリア料理の代名詞になっています。
アメリカで考え出されたアレンジで、たっぷりのチーズとスプーン1杯のスターチを使ったクリーミーでバターの風味豊かなソースのパスタ料理です。
この他にありえないと思ったのは、チキンがゴロゴロ入ったパスタです。
イタリアでは、パスタとチキンを一緒に見ることはありません。パスタには使いませんし、ロンドンで見かけたようなチキンのサイドディッシュの一品もありません。
ハワイアンピッツァはパイナップルとハムをのせたピッツァで、イタリア料理100%をうたうイタリアのレストランなら必ずメニューに載せていますが、私は疑問に思っています。というのも、元祖イタリアのピッツァはナポリ発祥で、トマトソースとモッツァレラチーズとバジルしか使わないのです(またもや国旗の色を思わせる食材ですね)。
あまりイタリアンらしからぬ イタリアンパスタ
近頃はイタリアでもピッツァのトッピングの種類が豊富になっていますが、それでもイギリスのようにビーフやチキン、パイナップルがピッツァにトッピングされることはありません。
さらにもう一つ、イタリア料理らしからぬ「イタリア料理」と言えば、チキン・パルミジャーナでしょう。
茄子のパルミジャーナとイタリアンカツレツが突然変異して生まれたような料理です。
イギリスでは、モッツァレラチーズの代わりにベシャメルソースを、パルメザンチーズの代わりにチェダーチーズを使うので、イタリア料理のパルミジャーナとは似ても似つかない料理が出来上がります。
でも、奇抜さではティッカ・ラザニアがNo.1だと思います。
これは1品どころか2品の料理を「改良」してみせた、いわば最高傑作です。奇抜さとは裏腹に評判はかなり上々で、少々非常識な取り合わせの一品です。
だって、イタリア料理のラザニアとインド料理のチキン・ティッカが一緒になっているんですから。
イギリスには本当にこんな料理があって、冷凍食品まで販売されています。
さらに困ったことに(もちろん冗談で大げさに言っていますが)EU離脱後はイタリアからの輸入品は1.5倍近くに値上がりし、輸入される量や種類も少なくなっています。
出入国管理が行われ、トラックや電車の行き来も減少しますから、こんな問題は予想通り、予測ずみのはず。おかげでイタリアからの食品輸入量は40%近くも落ち込んでしまいました。
以前は屋根のあるファーマーズマーケットでイタリア製のチーズや食品を買っていましたが、今はめったに見かけなくなりました。
もっと心配な展開はイタリア製の食材の模倣品が出回ることです。最も被害を受けやすいのは、特にパルメザンチーズやワイン、コールド・カット、保存食品などが危ないです。