• 2022.01.05
  • 英国のクリスマスの伝統
クリスマスの時期にまつわるアングロサクソン人の伝統的な習慣には、国境を越えて伝わり、今や世界各地で一般的になったものが数多くあります。
実際には、英国の伝統の多くが植民地時代に諸外国に伝わり、先々で独自のかたちに変化していったと考えるべきでしょう。
こうした伝統の一つに、12月24日から25日にかけての夜に行われるものがあります。サンタクロースと魔法のソリを引いてサンタクロースがプレゼントを配る手助けをするトナカイのために、ちょっとしたおやつ(特にイギリスではミルクとミンスパイが定番)を置いておくというものです。
このほか、イギリスでとても一般的なクリスマスの伝統的習慣としてアドベントカレンダーがあります。一種のカレンダーのようなものを作るのですが、12月24日まで毎日一つずつ開けていく小窓があり、チョコレートなどちょっとしたプレゼントが隠されています。


書店で販売されるアドベントカレンダー

クリスマスシーズンにまつわるアングロサクソン系の国々の伝統と言えば、どの家庭でもごく一般的に行われている伝統の一つ、クリスマスツリーの支度は外せません。
これは北欧生まれの人々、特にゲルマン文化圏の人々(アングロサクソン族)の間から生まれた伝統で、古くはキリスト教の成立以前に存在した伝統と関わりがありますが、英国では19世紀以降にビクトリア女王の夫アルバート公の影響を受けて一般家庭に広がっていきました。
生命と再生のシンボルとして飾られてきたクリスマスツリー。
英国の伝統によれば、12日間以上家の中に置いてはいけないことになっており、公現祭の前日の1月5日には片づけてしまうのが一般的です。
イングランドにはクリスマスツリーの委員会なるものがあり、ツリーの高さまで定められているそうですが、正確なサイズは覚えていません。

このほか、アングロサクソン系の国々におけるクリスマスの伝統では、イブに暖炉に薪をくべて出来るだけ長く燃やし、その燃え残りを新たな一年の幸運の印として大切にとっておき、翌年のクリスマスに燃やすのだそうです。
クリスマス休暇と大晦日については、友人や親戚、会社の同僚に新年の幸せを願ってクリスマス用のグリーティングカードを送るという伝統もあります。デジタル化が進んでもこの伝統は廃れていないようで、取引先や企業の間でも一般的に行われています。
さらに、子どもたちが家々を訪ねてクリスマスキャロルを歌うというものがあり、家の人にヤドリギやヒイラギの小枝を渡してお返しにお菓子やキャンディーをもらうという、クリスマスキャロルもこの季節ならではの代表的な伝統です。


クリスマスキャロルを合唱する人々

不死を象徴するヤドリギやヒイラギの小枝を交換する風習の起源ははるか古代にまで遡り、ドルイドと呼ばれる古代ケルト民族の祭司たちが冬至の祝いに用いた伝統から始まっていることも覚えておきたいところです。
このほか、良く知られているクリスマスの伝統と言えばクリスマス・クラッカーでしょう。
段ボール製の筒を色とりどりのキラキラ光る紙で包みキャンディーのような形にしたもので、中には小さなプレゼントやお菓子が入っています。
名前を書いて名札代わりに使い、クリスマスディナーのテーブルに並んだゲスト銘々のお皿の上に一つずつ置きます。
クリスマスランチの前に、自分のお皿にあるクラッカーを右手に取り腕を交差して左隣の人に向けて差し出し、左手で右隣の人が持っているクラッカーを引っ張る、というのが伝統的なやり方です。
パン!という小さな音と共にクラッカーが開くと、中からプレゼントが飛び出すという仕掛けになっています。


クリスマス・クラッカー


アングロサクソン人の影響は英国のクリスマスの伝統料理にも色濃く表れています。その一番がローストターキー(ターキーに詰め物をして焼いたもの)で、たいていはブルーベリーソースが添えられている一品ですが、さらにクリスマス・プディング(コイン型のチョコレートが中に隠されており見つけた人に幸運を祈ります)やクリスマス・ケーキ、クリスマス・ビスケットにも、古来の伝統がまざまざと感じられます。


サンタの帽子をかたどったクリスマス・ビスケット

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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