• 2022.05.18
  • 英国のイースターの伝統を守る
英国ではイースターが終わったばかりです。チョコレートエッグや家族での食事、芝生でのピクニック、日曜のミサや学校の休暇など、いろいろお楽しみがありました。
イングランドにはさまざまな宗教が共存しているので、すべての人がイースターを祝うわけではありませんが、かなり大型の連休期間になっています。
終わったばかりといえばもう一つ、数年前に実施されたEaster Egg Hunt(イースター・エッグハント)からCadbury Egg Hunt(キャドバリー・エッグハント)への名称変更をめぐって、いつもながらの議論も見られました。

アングロサクソンの文化の中でイースターの日にチョコレートエッグを食べる習慣は19世紀半ば、ビクトリア朝時代にさかのぼると言って間違いないでしょう。この習慣が始まる以前、その当時のイースターは、装飾や花、香水と最も強く結びついた行事でした。あの素晴らしいイースターのお菓子の生みの親はジョン・キャドバリーです。
今やキャドバリー社は英国最大の、そして世界でも指折りのチョコレートメーカーになりました。
キャドバリーのチョコレートは最初、モデリング用のチョコレートを単に混ぜ合わせることによって誕生しましたが、原料のチョコレートの質がどんどん良くなり装飾も精巧になると、より良いチョコレートエッグが生産されるようになっていきました。
現在イングランドでは、イースターの日曜日になると子どもたちが実際のエッグハントで卵を探すことになっています。
このイースター・エッグハントの習慣もビクトリア朝時代に、キャドバリーの取り組みによって生まれました。イースターの日曜日の礼拝後、子どもたちが公園や庭園でひとときを楽しみ、親が隠した卵を探すというものです。
古くからの伝統では、さまざまな色に彩色されたチョコレート(もしくはプラスチック製)の卵を家族がどこかに隠します。子どもたちは卵を探し出し、イースターバニーが自分たちにプレゼントしてくれた、卵の中のサプライズを見つけます。
さて、5年前から状況が面倒なことになり始めました。ナショナル・トラスト(英国の多数のモニュメントや公園を管理する団体)がキャドバリーのチョコレート工場と共に、伝統的なイースター・ハントの行事名から宗教的な祝日を意味する言葉をすべて取り除いて、「イースター・エッグハント」を「グレートブリテン・エッグハント」もしくは「キャドバリー・エッグハント」に変更することを決定したのです。
名称の変更を決めたのは、こうした行事に特定の宗教をもたない人々をも含めるためであるとも思えましたが、多くの人々はこの取り組みを強い思惑があると捉えていました。つまり、キャドバリー社の卵の販売促進をねらうマーケティング戦略で、宗教的な意味合いを損ねるものだと考えていたのです。
イースターになると、ロンドンでは毎年、トラファルガー広場でキリストの受難を再現した演劇が上演されます。入場料無料で、多数のエキストラや一般市民が参加し、広場周辺に巨大スクリーンが設置されることも許されているほどのイベントです。
通常、劇は2回上演されます。かなり壮大なショーですので、参加者にはキリスト教徒もそうでない人もいます。
このほか、イースターに関する英国の一般的な伝統行事といえば、各家庭で作るホットクロスバンがあります。
親子で一緒に作って、イースターの日曜日、ミサに行く前の朝食か食事の後に食べるならわしになっています。
ところで…ホットクロスバンとは?
甘みがあってやわらかく、発酵させて焼いた食べ物のことで、これにまつわるとても特別なお話があります!
実は、ホットクロスバンは中世に起源があり、聖なる金曜日に恵まれない人々に配るために修道士がこのバンを考え出したようです。
バンの表面には特徴的な十字の模様が入っています(明らかに十字架に関連する象徴的な装飾ですね)から、ホットクロスバンを見分けるのはとっても簡単。
マニトバ粉に砂糖、挽いたシナモン、クローブ、ナツメグパウダー、牛乳、卵、バターを混ぜたものを生地に使います。
ですからスパイスが効いていて、オーブンから出したときはとてもいい香りがします。焼き立てを温かいうちにいただくのが一番おいしいです。



特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 年齢子(ねずみ)
  • 性別
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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