• 2022.06.08
  • チーズの国、イギリス
ロンドンでは、どんな専門店でも望みのお店を見つけることができます。
人気のラバーダックシリーズの専門店、クリスマスのオーナメントを年中売っているショップ、さらには蝶に関するものばかりを扱うお店なんてのもあります。
私の大好きなお店はフランス語でチーズ専門店を意味する「La Fromagerie」。
チェーン店ではありませんが、一軒目のお店が成功し注目を集めているので、すでに別の場所に2店目をオープンしています。
イギリスの乳製品の伝統に新たな解釈を加えた専門店で、有名なメリルボーン・ハイストリートにほど近い小さな店舗です。
ヨーロッパで作られる最高級のチーズやその他の製品が好きな人たちの話の引き合いによく出て来るお店です。
ショップには専用の部屋があり、ヨーロッパ中から様々な種類のチーズを取り揃えた、温度調節つきのディスプレイケースが置かれています。
最も定番であるフランスやイタリア産のチーズ、スペインや東欧の味付けを加えたチーズやスモークチーズのほか、味にうるさい人も納得のチーズがたくさんあります。
特設コーナーはもちろん、イギリスのチーズに特化したスペースになっています。
私はここで、イギリスのチーズの中で最も美しいチーズに出会いました。

たいていの人は、イギリスチーズに定番のチーズよりさらに深い歴史があることを知りません。
母国イタリアではイギリスのチーズはほとんど知られていないので、私にとってこの歴史はまさに発見でした。とても意外だったのは、チェダーチーズにまつわる詳しい歴史です。
チェダーがサマーセット州の人口6,000人のとても小さな村から生まれたことを知りました。
もともとのチェダーチーズは、現在米国で同じ名前で生産されハンバーガーやトーストに使用されている、あのオレンジ色の粘りのあるチーズとは全くの別物です。
米国ではチーズ作りの歴史は比較的新しいですが、イングランドでチーズ作りが始まったのは数千年前だとか。中世にチーズ作りを行っていたのは修道士だそうで、イギリスを代表するチーズが今日、数多く存在しているのは彼らのおかげのようです。

サマーセット州の元祖チェダーチーズはハードタイプの大型のチーズで、色は淡い黄色からかなり濃い山吹色まで様々あり、外側は濃い茶褐色の硬い皮で覆われています。
低温殺菌処理が導入されると、外皮なしのチェダーチーズがイングランドでも人気になり始めました。
元来の製法は生乳を使用しますが、現在、その製法を守ってチェダーチーズを製造しているのは家族経営のごく少数の農場に限られ、スローフード運動が積極的に関わるようになりました。
作り手の不足によって食品の製造が危機に瀕しているときや、イギリス生まれのチェダーチーズのように「発祥時の純粋な食材が損なわれた」といった状況が生まれたときに、スローフード運動が関与します。
もう一つ、私の好きなのはジャージー乳を使用したブルーチーズです。脂肪たっぷりの熟成された柔らかめかセミハードタイプで、薄黄色の地に青い模様(これが名前の由来)のチーズです。英国デヴォン州のジャージー種の牛乳のみを使用して作られます。
ブルーチーズですから、欧州連合(EU)の原産地呼称保護(PDO=Protected Designation of Origin)を受けてきた、数少ない伝統的なイングランドのチーズの一つである有名なスティルトンの親戚にあたります。
スティルトンはダービーシャー、レスターシャー、ノッティンガムシャーの3つの州でしか生産できず、また、その名で呼ばれるためには、以下のような厳格で正確な基準に従って製造されなければなりません。
・まず、地元産の牛乳を低温殺菌したものを使用
・チーズは円筒形、圧縮しない
・ホイールの重さは約5kgで5か月以上熟成
・外皮は自然形成され、薄茶色
・柔らかくクリーミーな食感
・中心から放射状に出る繊細な青い縞模様を持ち、濃厚でややスパイシーな風味がある
スティルトンはとても重要な存在で、このチーズにちなんで命名されたコミックのキャラクター(ネズミのジャーナリスト)もいるほどです。
現在、牛乳から作られているチーズはイギリスだけでも700種類以上にのぼり、チーズやチーズソースを添えた郷土料理がたくさんあることも知りました。なかでも「Welsh rabbit(ウェルシュ・ラビット)」あるいは「Welsh rarebit(ウェルシュ・レアビット)」と呼ばれるチーズをトーストにのせた一品は特に有名です。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

ジャンフランコ・ ベロッリの記事一覧を見る

最新記事

おすすめ記事

リポーター

最新記事

おすすめ記事

PAGE TOP