• 2022.11.04
  • ロンドンを「旅」して~扇と運河と
ロンドンは独自の魅力にあふれ、楽しくて、退屈することがありません。
これは誰もが知っています。
でも、豊かで変化し続ける活動的なこの街のことをすべて知っていると言える人は、いないのではないでしょうか。
ロンドンにはイギリスらしい風変わりな部分や珍しいスポットがあり、新しいところに行ってみたい、住み慣れた町でも「旅行者」でいたいと常々思っている私は、好奇心をくすぐられこうした場所についてもっと知ろうと思い立ちました。

というわけで、最近見つけたスポットの一つがロンドンのファン・ミュージアム(Fan Museum)です。
「fan」と言っても電動の扇風機ではなく、昔からある、手でもつ扇を専門に扱う世界唯一の博物館だそうです。
このこぢんまりしたユニークなミュージアムには、折り目をつけた布や絹、紙を扇の面に用い、象牙やべっ甲、クジャクの羽根の装飾を施した素晴らしい作品の数々が展示されています。
ミュージアムの入っているジョージア朝建築は、フレスコ画が描かれたベランダを備えた18世紀に建てられた優雅な建物2棟や、扇の形にかたどられた空間のある美しい庭園、見事な日本風庭園、アフタヌーンティーが楽しめるオランジェリー(温室)で構成されています。
建物の中に入ると、最初の部屋ではさまざまな扇が紹介され、製作技術について解説されています。
扇には大きく分けて団扇型と扇子型があります。扇子型には、紙や布1枚を楊枝状の扇骨で折りひだをつけたものや、糸で綴った薄い板を均等に貼ったものなどが含まれます。
形もさまざまで、半月型のものもあれば円形章型のものもあります。つまり、洗練された東洋の扇や日本の扇も含めて、あらゆる国のあらゆる時代に作られた多彩な扇がここに展示されているのです。
館内には古代エジプトのファラオ時代の扇も展示されています。
コレクションがあまりに膨大で一度ですべての作品を紹介できないため、年に2度入れ替えが行われ、テーマや時代、地域の異なるさまざまな新しい作品がそのたびに登場します。
ミュージアムでは、かつて扇の絵はすべて手描きだったなど、面白い事実をいろいろ知ることができました。特に興味深かったのは、ハエを追い払い、蒸し暑い日に汗ばむ体を冷ます用途に使われていた扇が、どのようにして地位や富を象徴するファッションの装飾品へと発展していったかという歴史でした。
このほか、社会の礼儀作法が厳格で感情表現を抑えることが求められた時代に、扇ならではの言語をもたらしたことも知りました。扇は手の延長として扱われ、この洗練された「ボディーランゲージ」を使って女性は、恥ずかしい思いをせずに細やかな感情を表現でき、情人がいるところで人に秘密の関係を知られたり夫に気づかれたりすることなく危険な想いを伝えていたのでした。


ファン・ミュージアム

また、ロンドンの「旅」では、リトル・ベニスという「穴場」があることも発見しました。
ロンドンの真ん中にリトル・ベニスって?
本当です。
本場のベニスには大きさも、美しさも敵いませんが。
市内にはテムズ川が流れ、一部の地域には運河が集まり、ヨーロッパ有数の大都市がまるで運河とボートに彩られたリトル・ベニスのようにも見えます。
パディントン駅から近い、ロンドン北西部の小さな住宅エリアですが、あまり人に知られていないスポットのようです。
リージェンツ運河を中心に発達してきた住宅エリアで、緑地や庭園、アヒルやボートが魅力の一画です。
水上では人形劇も上演されます!
ボートの中では(リトル・ベニスでしか見られない、絵のように美しいボートです)さまざまなショーが上演され、年代を問わず誰でも楽しめるそうです。
本物の劇場さながらに、一つの劇がまるごとボートで上演され、休憩時間になると軽食が販売されます。冬は暖かく夏は涼しく、こうしたショーが好きな人が集まる格好のスポットですね。
本当にありとあらゆるものが存在するロンドン。この街を訪れる理由は、もっともっとありそうですね!


リトル・ベニス

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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