• 2022.11.15
  • イギリスで食の探検!
イギリスで生まれ育ったイギリス人ではないため、私のイギリス文化発見の旅は現在進行形で続いています。
好奇心旺盛なタイプなので、イギリスの歴史や習慣についても常に詳しく知りたいと思う気持ちがあり、ロンドン市内の知らない場所をしょっちゅう探検しています。
新しい食べ物の試食も探検の一つです。
自宅で試作するのも探検です。これまで何度もやってみました。
概してイギリス料理は世界的に評価が低いように思いますが、地域や地元の名物料理をネットなどで調べれば、この国で最も定番の料理フィッシュ・アンド・チップスに代わる美味しい食べ物が見つかるかもしれません。
全体的に見ると、イギリス料理は肉か魚をメインに副菜に野菜やジャガイモも添えられ、一皿で概ねすべての栄養素が揃うヘルシーな料理です。
メインの前の料理を一皿、次にメインの料理を一皿…と食べるのが一般的な故郷イタリアとは違い、この国では一皿だけで栄養素がすべてまかなえるというわけです。

さて、先ほどのイギリス料理の探検のお話ですが、最近私はベッドフォードシャー・クランガー(Bedfordshire clanger)作りに挑戦しています。
ベッドフォードシャー・クランガーは、地域や個人によって使われる材料や形などいろいろ違いはありますが、コーニッシュ・パスティ(Cornish pasty)に似た食べ物です。
実は、労働者や農地で働く農夫たちのお弁当用の食べ物として考え出されたそうです。
私が参考にしたレシピの説明によれば、動物性の脂と小麦粉で作るこの塩味のロール状の食べ物は、19世紀からイングランド東部のいくつかの州で作られるようになったのだとか。
外側の生地は栄養価が高いのですが、もともと食べる部分とは考えられておらず、むしろ働く人々が汚れたままの手で触れないよう単に中の具材を包むもの(食べずに捨ててしまうもの)として使われていました。
そのため、昔は何重にも巻かれとても分厚くなっていましたから、食べるときは「クランガーをむいて」内側の生地とフィリングだけを食べるのが一般的でした。
フィリングについては、レバーとオニオン、ベーコンとポテト、ポークと野菜など、食材の組み合わせが何パターンかあります。さらにその横にはたいてい煮詰めたフルーツやジャムなど甘いフィリングが入っていて、みんなセージの香りがするのが特徴です。
「クランガー(clanger)」の正確な語源は、塩味のものと甘いものという二種類のフィリングが「ぶつかりあう(clanging together)」という意味なのかもしれません。
イギリスの州をあちこち訪れると、いろんなタイプのベッドフォードシャー・クランガーに出会えます。名前も「ドッグ・イン・ブランケット(dog in blanket)」、「ベーコン・バジャー(bacon badger)」、「フリッティング・プディング(flitting pudding)」などさまざま。その中から一番気になる名前のものを食べてみるのも楽しいと思います。
ちなみに私は「ドッグ・イン・ブランケット」作りに挑戦してみました。アメリカの「ピッグ・イン・ブランケット(pigs in a blanket)」と呼ばれるペストリーに似ていると思っていたのですが、アメリカのペストリーは薄いパイ生地にフランクフルト・ソーセージを巻いたシンプルなもの、イギリスのペストリーは高級ソーセージや手作りクラストなど高級食材を使い、中身が見えないという点が異なるようです。


もう一つ作っているのが「ポッテッド・シュリンプ(potted brown shrimp)」です。シュリンプと澄ましバターを使った面白い作り方をする料理で、小ぶりの器の料理をそのまま食べるか、トーストしたパンにのせて食べる方法があります。
イギリスで作られるレシピには肉や魚を鍋や器に入れて調理するものが多く、ガラスの器で通常密封して調理して保存するのが一般的なんだなということがわかりますね。
雑誌で見つけたレシピによれば、シュリンプは塩ゆでしてからバターでじっくり調理し、最後にナツメグ、ニンニクのみじん切り、カイエンヌ・ペッパー、ブラック・ペッパーを加えて好みの味に仕上げます。
このレシピはパスタのソースにも最高だと言っていた友人もいますが、これについてはイタリア人から反対の声が上がりそうです。
このシュリンプ料理はモーカム湾の郷土料理だそうで、モーカム湾で獲れたシュリンプを使うと最高に美味しいポッテッド・シュリンプができるのだとか。
残念ながら、ここロンドンではそんな新鮮なシュリンプは手に入りません。でも、大西洋産の高級ブラウン・プローンを使ってみたら、結構美味しくできました。

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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