• 2024.11.01
  • 神様のガラクタ置き場
今回は、私と同じようにアートが好きで人ごみが苦手で、さらに、私と同じく新たな珍しいスポット探しが好きな方に、ぜひ読んでいただきたいお話です。
ご紹介するのは「ゴッズ・オウン・ジャンクヤード」(God’s Own Junkyard)。ファンキーな名前ですが、とてもすてきなアートギャラリーです。
もしロンドンを訪れ、人気の観光スポットとは異なる、ガイドブックにも載らない場所で、一風変わっていて前衛的であっと驚くようなところを探したいという人なら、まさにここ。
見るからに不思議な空間で、世界で唯一のバーで1杯飲みたい人にもぴったりの場所です。
ギャラリーには、クリス・ブレーシー(訳註:1954-2014。英国のネオンアーティスト、映画『モナリザ』をはじめハリウッドの著名な作品の美術セットを制作)が手掛けたネオンサインを取り揃えた最大規模かつ完全版ともいえるコレクションが展示されています。
ここには、クリスが制作したあっと驚くようなネオンサインの作品の数々がおよそ40年にもわたり収集されてきました。中にはかつて実際に映画で使用されたものもあり、シーンの数々を彷彿させます。
レトロなネオンサインや廃棄された古びた信号や像のほか、サーカス用の照明など、数えきれない品々を心ゆくまで満喫できるはず。
クリス・ブレーシーは生前、英国のネオンサインのアーティストとして知られた人物で、ハリウッドの著名なプロデューサーの目に留まり、トム・クルーズやジャック・ニコルソンといった名優演じる映画のセットを制作する機会を得ます。
クリスが手掛けた映画セットはキューブリックやティム・バートンにも認められ、以後、彼らの作品のセットを数多く制作するようになりました。
2014年にクリスは亡くなりましたが、彼の家族が今もこのギャラリーを引き続き運営しています。
コレクションのネオンサインはレンタルおよび購入が可能ですが、中にはかなり高額の作品も含まれています。

ドリンクを飲みながらギャラリー内を見て歩けば、映画やビデオクリップなどで見覚えのある作品にきっと出会えるはず。
種類を問わずネオンサインが好きなら、まさに楽園とも言えるスポットです。
インダストリアルな空間の至る所に、天井高くから吊るされたネオンサインや蛍光色の照明の膨大なコレクションが眩しく輝いています。
いわゆる人気の観光名所とは異なり、街中から歩いてくるにもかなり距離があるため、隠れた名所なんですが、訪れる価値はあります。
ゴッズ・オウン・ジャンクヤードはファッション雑誌「ヴォーグ」にも登場しました。10年ほど前に写真撮影のセットに使用され、同誌のカバーを飾ったこともあります。
お腹が空いていれば、ギャラリー内にはカフェバー「ローリング・スコーンズ・カフェ」(The Rolling Scones Cafe)もあり、居心地良さそうなソファに座ってドリンクや食事も楽しめます。
さて、メニューやいかに?
提供されるのは蛍光色のドリンクやカクテルで、展示品のネオンサインそのものです。
料理もファンキーで、バーガーなど色々ありますが、芸術的なテイストを備えた品々です。
何よりうれしいのは、入場料が無料であること。いつでもここを訪れることができ、雨の日に友人と来ても楽しめます。ロンドンは雨がよく降りますから!
聞いたところでは、ギャラリーの活動はボランティアが行い、経費削減のために週末のみ一般公開されているそうです。
最寄り駅はヴィクトリア線の終点ウォルサムストウ・セントラルで、駅から徒歩15分の距離にあります。
残念ながらギャラリー内ではカメラによる撮影は禁止されていますが、個人的な使用やSNSにアップするために携帯で撮影するのは構わないそうです。


ゴッズ・オウン・ジャンクヤード

ネオンサインに特に興味がない人にも、このギャラリーはぜひともお勧めしたいスポットです。ビンテージ感にあふれエキセントリックで、過去と未来を同時に感じさせ、好みに関係なく訪れる人すべてを楽しませてくれる。そんなロンドンの真髄が、ここゴッズ・オウン・ジャンクヤードには息づいています。


ネオン・ミュージアム

特派員

  • ジャンフランコ・ ベロッリ
  • 職業ブロガー/ミュージシャン

私がロンドンに引っ越してきたのは2年以上も前ですが、ロンドンの外国人居住者向けのニュースレターで、この大都市での体験や新しく引っ越してきた外国人向けのアドバイスを紹介するようになったのは昨年からです。ロンドンはとてもダイナミックな街で、だれもが楽しめるものがたくさんありますが、迷うことなく満喫するためには地元の人の目線を参考にすることが大切です。みなさんにロンドンの隠れた魅力をお伝えするガイドになりたいと思っています。

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