• 2021.05.07
  • 大富豪カルロス・スリム
カルロス・スリムという人物をご存じでしょうか。日本ではほとんどその名前を聞きませんが世界的な大富豪の一人です。今年2021年版のフォーブス世界長者番付でスリム氏は16位にランクインしており、2010年~2013年の4年間は1位の座を維持していました。
カルロス・スリム・エル-(Carlos Slim Helú)は1940年メキシコシティ生まれの81歳。実業家として大手通信業者のテルメックス、携帯電話事業者のテルセル、世界最大の企業の一つであるメキシコの通信会社アメリカ・モービルを所有し通信王とも呼ばれています。その他、25歳の若さで立ち上げた不動産投資会社グルーポ・カルソの成功により26歳の時にはすでに4千万ドルの資産を所持。そしてタバコ会社の買収で豊富な資金をもたらし、製造業や販売業、太陽光発電や石油、鉄道などのインフラも手掛ける一大企業になりました。1980年代のメキシコの石油価格の急落でメキシコ債務危機が起こり、その際に大企業の株を底値で買い集め長年投資を続けます。メキシコ経済が復活するに従ってスリム氏は世界有数の資産家になっていったという経緯があります。またスリム氏はインブルサ銀行や老舗デパートのサンボーンズ等も経営しており、メキシコに住む人であれば恐らく必ずと言っていいほどスリム氏の会社を利用しているのではと思います。
スリム氏がこれほどまでに商才に長けた理由の一つとして、父親による英才教育があります。彼の父親はレバノンからの移民で、1911年にドライフードストアをオープンし、更にその後別のお店も成功させます。スリム氏は実業家である父親とチリから移住してきた母親との間に6人兄弟の三男として生まれました。父親はスリム氏が13歳の時に亡くなられていますが、兄弟はそれぞれ出納帳があり自分のお小遣いを管理することを課題とされていたそうです。その後スリム氏は12歳で株取引を始めています。彼の経歴は大変興味深く、大学はラテンアメリカの名門であるメキシコ国立自治大学に進み土木工学を専攻する傍ら、学生でありながら数学を教えていたようです。
スリム氏は実業家だけでなく慈善家としても活動しています。カルロス・スリム・エル-研究所はゲノム研究に対して約58億円を出資していたり、カルロススリム財団からはメキシコ国内の公立学校に10万台以上のコンピュータを寄贈したり寄付や奨学金等でも多くの支援をしています。
そして最も有名なのは2011年に建設したソウマヤ美術館です。この美術館はメキシコやヨーロッパの美術品をはじめ多くの有名美術品を展示しているにも関わらず入館料無料で、建物も斬新なためいつも多くの観光客で賑わっています。ここに展示されている美術品6万6000点は全てスリム氏の所有するものだというから驚きです。中でもオーギュスト・ロダンのコレクションはフランスに続いて世界最大なのだとか。このソウマヤ美術館の名は亡き妻ソウマヤ・ドミットさんの名前からつけられており、美術館の設計はスリム氏の娘で母親と同じ名前のソウマヤさんの夫フェルナンド・ロメロ氏が担当しています。


ソウマヤ美術館

ソウマヤ美術館は日本人や外国人が多く住むメキシコシティのニューポランコ(ヌエボ・ポランコ)地区にあります。以前は工業地帯だった場所をスリム氏が開発し、高層マンション、ショッピングセンター、オフィスはもちろん映画館やミュージカル等を上演するための劇場、そしてソウマヤ美術館の向かい側にはインブルサ水族館まであります。この水族館ももちろんスリム氏の経営です。ニューポランコは工業地帯ということもあり元々あまり治安が良くない地域でしたが開発によって地価が上がり、目に見えて様変わりしたため今では多くの外国人が住み各国から人が訪れる観光スポットとなっています。ただまだ開発途中で一本道を逸れると危ないということもありますが、スリム氏によって近い将来どんな街に変貌を遂げるのか楽しみでもあります。

特派員

  • パドラ リボド 裕美
  • 職業主婦

メキシコの首都、メキシコシティで夫と娘の3人暮らし。夫の仕事で来墨し、スペイン語はできないながらもママ友もでき、毎日を気ままに楽しんでいます。陽気で魅力的なメキシコのことをたくさん知ってもらいたいです!

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