年末のイベントやお祝い事を間近に控えるこの時期、今回はディジョン式のお祝いの方法をご紹介したいと思います。フランスは歴史的にカトリックの国なので、信者にとってクリスマスは非常に大きな意味を持つ行事です。毎年この期間、12月24日と翌日の2回にわたって、宗教当局主催の大がかりなミサが行われます。ディジョンではさらに、昔から使われているキリストの降誕場面の小さなレプリカを各教会(ディジョン・ノートルダム教会など)に飾ります。
ただフランスは国際色豊かな国なので、無神論者も、イスラム教徒や仏教徒など他の宗教の信者も大勢います。フランス人にとってクリスマスは、商業的な色合いも強い行事です。たとえ信者でない人でも、友達にプレゼントを贈るなどしてクリスマスを祝います。サンタクロースのおじさんも、クリスチャン家庭で育ったかどうかに関係なく、依然として心温まる存在であり、子供たちにとっての憧れです。フランス人、特に若い世代は、クリスマスと大晦日を異なる2つの方法でお祝いします。大抵の場合はクリスマスを家族と、そして大晦日は友達と一緒に過ごすのです。クリスマスは、2~3日ほどの間は家族が勢ぞろいして、伝統料理を囲みながら祝うのが習わしです。フランスではフォア・グラ、サーモン、エスカルゴなどをアペタイザー(前菜)として出すのが一般的です。メインの料理は、家庭や地域によって異なります。でも、昔ながらのデザートと言えば、古い迷信にちなんだお菓子のブッシュ・ド・ノエル(直訳すると「クリスマスの薪」「クリスマス・ロールケーキ」の意味)が定番でしょう。大昔のクリスマスには、暖炉に入れた太い薪を大晦日まで少しずつ燃やしたのだと伝えられています。それが本当なら、新しい年も豊かな収穫に恵まれるようにとの願いをこめた習慣だったのでしょう。この言い伝えの名残のお菓子がブッシュ・ド・ノエルです。チョコレートやフルーツを使って作り、クリスマスと大晦日の両方に食べます。
クリスマスは、たとえキリスト教徒ではなくても、家族が顔を揃えて楽しいひとときを過ごせる貴重な機会です。最初に説明したように、大晦日は、家の外で友達と過ごすパターンが圧倒的に多いのです。若者は誰かの家やアパートで親しい仲間内の夜のパーティを楽しんでから、レストランやバー、ナイトクラブに繰り出したり、往来で知らない人々に混じってお祝いをします。 大晦日にはコンサートや公式のパーティ、もちろん伝統ある元日の打ち上げ花火など、この日のための特別な催しが行われます。 普段は他人に対して一定の距離を保つ人々も、大晦日だけはみんなと一緒に楽しみたい気分になるのですね。 大晦日のお祝いとして街中を飾り付けるのもディジョン独特の風景です。テーマごとのイベントや建造物が街のあちこちにお目見えします。例えばレピュブリック広場には、大抵の場合、クリスマス・マーケットと大観覧車が登場します。これは言うなれば、大阪の梅田スカイビル近くのクリスマス・マーケットやHEP FIVE観覧車の小規模バージョンといった趣きです。リベラシオン広場では、例年クリスマスと大晦日のためのスケートリンクがオープンします。北極の景色を再現した小空間も、この時期限定で登場します。クリスマスイブの夜、サンタクロースに扮した人が市庁舎の壁を登る特別イベントに出演するのも毎年のことです。
ディジョンのリベラシオン広場の装飾 クリスマス・マーケットのキャンディ・ショップ クリスマス・マーケットをパトロールする警察官たち上の画像からもお分かりのように、11月中旬にパリで起きた痛ましいテロ事件を受け、当局は警備を強化しています。あの事件以降、安全上の理由から多くのイベントが中止になりました。しかし、かつてないほどに現実味を帯びてきたテロの脅威があっても、自分たちは恐れてなどいない、自分たちの生活を変えさせてはならないという信念を示すために、フランス人はこの年の瀬もいつもと同じように祝福したいと願っています。