- 2015.10.16
- 地元の食材とスローフード
イタリアでは地元の食材を買う人が増え、特に女性の間で人気が高まっています。
地元で生産された食材は、他の地域や海外の食材のように輸入の手続きを経ずにそのまま家庭の台所で調理できるため、ここでは「0km(キロ)食材」と呼ばれています。このような食材が大量生産品より好まれるのは、品質に優れ、環境保護と地域の発展に役立つ上に、値段も安いからです。
実際、仲介業者を通さないため、輸送や販売にかかるコストも低く抑えられ、最終的に本来の価格より30%ほども安くなります。1回の食事は食卓に出される前に平均1,900km以上も旅をすると言われていますが、その輸送コストの大部分は最終消費者が負担しています。
地元の食材を購入すると、地元の農家や地域の生産者を助けることにもなり、地域経済にも貢献できます。また、冷凍して長時間トラックに揺られたり、スーパーで在庫として保管される代わりに、出荷元で袋詰めにされた後すぐに販売されるため、品質と鮮度も保証されます。
写真:地元の乳製品販売店
写真:地元のチーズ
イタリア人は旬の果物を買うのが好きで、年間を通して購入できる高価な輸入果物を買うよりも、その季節ならではの果物を買うことを楽しみにしています。最近では、食材の宅配に対する関心も高まり、特に、店の行列に並ぶ時間のないフリーランサーや高齢のために外出がむずかしくなった女性たち、ベビーカーを押しながら凸凹した石畳を歩かなければならない若い母親には人気です。そういった人たちや地元の食材を好む人びとに向けて、農家から野菜や果物が毎週直接、玄関先まで配達されるサービスが実施されるようになり、地元の経済も活性化し、消費者の生活も便利になりました。
地元の食材の消費量が増えたのは、「ファーストフード文化」の拡大に対抗するために1986年にイタリアで設立されたスローフード協会のおかげでもあります。スローフード協会は身近な地元の食材を手始めに、世界中の品質に優れた食材の価値を見直すことを理念とする国際的な非営利団体です。この組織は地域性と伝統を尊重し、環境や地域の生態系と調和して食材を育てる生産者を支援することを目的としています。現在150か国で展開しているスローフード運動を通して、栄養的に優れた食事の普及に努め、食材の環境にやさしい生産と公正取引による流通を世界規模で提唱しています。イタリアでは、高品質の「スローフード」を促進するイベントが年間を通して開催されます。
写真:スローフード協会のブース
写真:食材の情報を伝えるスローフード協会のディスプレイ
イタリアでは都市や町、あるいは村ごとに、地元の農家と生産者が新鮮な農産物を安く販売する市場が毎週平日に開かれ、果物や野菜だけでなく、新鮮な魚や肉、チーズ、蜂蜜、さらには花まで買うことができます。
いくつもならぶ屋台(青空市場)を特徴としたこのような市場は、イタリアの歴史上重要な流通形態として古くからありました。 立地、品揃え、品質と価格のバランス、鮮度などによって市場の活気は異なりますが、日ごろからおいしい料理を作ることにも食べることにも関<心の高い人びとにとって市場は、食材調達の場としてなくてはならない存在です。
写真:地元生産者が出店する市場
写真:毎週開かれる食材市場