- 2015.11.27
- リグーリア地方の待降節
少し気の早い話になりますが、イタリアで最も重大な祝日がクリスマスであることは間違いなく、多くのイタリア人が一年中この日を心待ちにしています。深夜のミサに参列したり、この一年に感謝を捧げる祈りを唱えたりして、祝祭の宗教的な起源を学びながら育てられたイタリア人の大半にとって、クリスマスは単に飾り付けたツリーを囲んで家族と過ごすだけの日ではありません。
クリスマスは近年ますます商業的な祝日になりつつあり、霊的な意味での重要性が失われた部分もありますが、若い世代がクリスマスを重視する度合が年輩の人よりも大幅に低下したとは言え、やはりイタリア人は伝統を守り、古い習慣を大切にすることを好みます。今日のイタリアでは、人々は教会やクリスマスの霊的な意味にあまりこだわらず、より現代的な方法でしきたりを守りながら宗教的な生活を実践しています。そう言いながらも、アドベント・ウィーク(待降節)と呼ばれるクリスマス前の数週間はこの祝祭本来の意味を学んだり、当日の準備にいそしんだりもするのです。待降節の期間は4週間で、イタリア語の“avvento”の語源はラテン語で「来る」を意味する動詞“advenire”であり、アドベントすなわち待降節は、信者に幼子キリストの降誕を告げるための行事なのです。
アドベントカレンダーは木製のものや布や厚紙で作られていて、12月1日に始まり、クリスマスイブで終わります。カレンダーの日付の部分はその数字が書かれた窓になっていて、窓の中にはチョコレートや小さなプレゼントが入っています。工場生産のカレンダーもありますが、今でも自分の大切な人のために手作りすることを好む人が多いのです。
木製のアドベントカレンダー
街のメイン広場のアドベントカレンダーのライトアップ
クリスマスの醍醐味は何と言っても美しい装飾ですが、この飾りには思い出や象徴としての役割もあります。必需品のクリスマス ツリーは間違いなくどの家庭にもあるはずです。もとは非常に古い異教の伝統であったクリスマスツリーを19世紀後半のイタリアに持ち込んだのは、マルゲリータ・ディ・サヴォイア=ジェノヴァでした(そう、かの有名なピッツァ・マルゲリータと同じ名前の王妃ですね!)。無原罪の聖マリアの祝日である12月8日に集まってツリーの飾り付けをするという伝統は、大抵のイタリアの家庭では家族全員が揃って行う特別なイベントとして位置付けられています。
クリスマスツリーの飾り付けはイタリア中のほぼ全ての家庭で行われているのに、キリスト降誕を再現する家がごくわずかだというのは全くもって残念なことで、なぜならこの飼い葉桶の場面は、クリスマスの歴史を感動的かつ創造的に表現した最古のものだからです。
キリストの降誕場面を再現する習わしは、著名な芸術家たちが依頼を受けて彫刻や絵画を制作した13世紀に聖堂や貴族の宮殿で広まっていきました。
クリスマスツリーの最上部の天使
ライトアップされたキリスト降誕シーン
リグーリア地方では至るところで、文化団体や教会のグループがキリスト降誕場面を再現しています。演者がライブで再現する降誕劇は、数百人がかりで何日もかけ、クリスマスの神秘そのものを生き生きと描き出して祝祭本来の精神を呼び戻すという、きわめて伝統色の強い行事です。リグーリア地方には降誕劇再現の行事に参加する町が数多く存在します。出来る限りユニークでクリエイティブな降誕場面にしようと、どの町も独自のテーマを掲げて取り組むのです。
サヴォーナ県にあるオルコの町では、12月24日と25日、この日のために地元の職人が制作した人形に衣装をまとわせたキリスト降誕劇の舞台が披露されますし、ジェノヴァの内陸部にあるトッリーリアでは、石に囲まれた中世そのままの村落のあらゆる通りで、等身大の像を使ったバロック様式のキリスト降誕が公開されます。
オレーロという町で必見なのは、全ての登場人物を眠り姫やピーター・パン、白雪姫、そして何とスパイダーマン(!)といった童話などのキャラクター達が演じるという、何とも特別なライブのキリスト降誕劇です。
マナローラの町に出現する飼い葉桶の場面は、ライトアップした降誕場面としては世界最大の規模を誇るものです。地域の一角にある丘の斜面にしつらえられたセットはもと鉄道職員が手がけたもので、登場するキャラクターは250種類、材料はすべて廃棄物資、照明には1500個もの電球が使われています。クリスマス前の数週間、最高にオリジナルでユニークな演出を施した降誕場面が見られる町々への旅を、イタリア人は愛してやみません。というわけで、毎年このシーズンになると、リグーリア地方は人気の旅行先ランキングの上位に輝くのです。
トッリーリアの等身大の像を使ったキリスト降誕
マナローラのライトアップされたキリスト降誕場面