• 2017.07.11
  • 聖なる花の祭典、インフィオラータ
毎年、カトリック教会でCorpus Dominiの祝祭(いわゆる聖体祭のこと)が行なわれる6月末になると、イタリア半島全土の都市や町の通りも広場も、花の装飾で華やかに変身します。本来、聖体祭は三位一体祭の後の木曜日に祝うものでしたが、イタリアでは利便性を考慮した結果、今は日曜日に変更されています。

6月の終わりの日曜日、花びらと食べられるオーナメントで作り上げた本物の芸術作品で花盛りの路上沿いに、聖なるパレードがお目見えします。
これはインフィオラータと呼ばれるお祭りで、その名はイタリア語でまさに「花」を意味するイタリア語の「フィオーレ」から来ています。

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宗教的な祝祭であるCorpus Domini(聖体祭)


リグーリア州にある村のいくつかは、毎年この時期になるとオープンエアの美術館に様変わりします。教会の正門やポーチの正面に花びらをあしらってインフィオラータを祝うようなシンプルデザイン派の町もある一方、伝統がより色濃く根付いた土地では、その地域や土地ゆかりの聖人にまつわる物語や伝統、伝説を表現する連作パネルを、アーティストが見事に完成させていたりします。

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宗教的アイコンを題材にしたタペストリーもちらほら


リグーリア州で行なわれる様々な聖なる花祭りの中でも最も有名なものに数えられるブルニャートのインフィオラータは、その界隈でもより伝統色の濃い祝祭です。ブルニャートはチンクエ・テッレの奥地、ラ・スぺツィア県にある小さな村落です。こぢんまりとしたこの村では、全員が顔見知り同士である村民が、毎年恒例のこの行事に一丸となって取り組みます。
このブルニャートでは、お祭りの日の朝早くから、歴史的な町の通り沿いに花のタペストリーを製作しているアーティストたちの姿が見られます。その作品を見物人が楽しむことができるのは午後一番からで、夕方の6時きっかりになると、聖堂から中央広場まで続くパレードが始まります。
熟練した花職人たちは、当日使うための花やハーブ、色とりどりの植物を揃えて乾燥させて、数日前からインフィオラータの準備にいそしみます。
アーティストたちは、絵画の図案に基づき、様々なテクニックで彩色した花や種子(大麦、米、オート麦など)を、また輪郭には挽いたコーヒーの粉を使ったりと、色々な技法の「ミックス」の妙を披露します。

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花びら、ハーブ、種子を使って絵を完成していく


この技術には高低差の起伏がもたらす視覚的効果があり、最終的に、ディテールの細やかさと豊かな色合いが作品に加わるのです。

インフィオラータは広く浸透した伝統に根差すお祭りで、何世代にもわたって受け継がれて今に至ります。神聖さ、信仰心、芸術、そして自然がうまく調和し、通りが花の絨毯で染め上げられる光景は、夢の中のひとコマのようです。この行事は観光客にとって、かつての時代の村にタイムスリップしたり、長年続く伝統を学んだり、ご当地グルメを味わう絶好の機会でしょう。村の住人たちが全員寄り集まって過ごすイベント期間中は、子供たちが名人から花の装飾技法の手ほどきを受ける場面も見られ楽しいものです。

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様々な技法を大人から習う子供たち


インフィオラータは、子供から10代の若者、成人そして高齢者まで引き込み、それぞれのグループが決まった役割を受け持つことで成り立つ、強い繋がりを軸としたチームワークの賜物です。子供たちは米に色を塗り、お年寄りは花びら集めに専念し、ティーンエイジャーが型を担当し、成人たちはタペストリーを組んでいく、という具合。このイベントの仕事は、厳密な図像のリサーチおよびアーティストによるデザインを経て、スケッチ画の制作という期待に満ちた作業からスタートを切るのです。

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美しい花のアート作品


リグーリア地方は別名「花のリヴィエラ」とも呼ばれ、これらの花は、スポンサーとして知名度アップのためイベントに協力している温室栽培業者によって提供されます。コーヒーの粉を集める係の住民は、イベント本番の数週間前からあちこちのカフェを渡り歩き、バリスタが廃棄するはずだったコーヒーかすを手に入れます。集められたコーヒー粉はバケツの中で水や泥と混ぜ合わせ、お祭り本番に備えてひとまとめの状態にしておくのです。
イベント期間中、町のすべての通りが良い香りに包まれるのも、このコーヒーのおかげです!

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“U Burgu”は「村」を意味するリグーリア州の方言



特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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