• 2017.11.06
  • ジェノヴァ-カゼッラ鉄道を行く
ジェノヴァとカゼッラを結ぶ路線は、同ケーブル鉄道沿線の2本の橋の倒壊事故から2年以上の運休期間を経て、先ごろ運行が再開されました。
最初に開通した1929年当時、この路線はもっぱらジェノヴァ市周辺の山間部から港湾エリアに通勤する人々を都心に運ぶためのものでした。


カゼッラ行きのケーブルカー

去年の5月、修復と改装を終えて新しくなった同線の開通式が行なわれました。3台の特別列車がジェノヴァのマニン広場を出発し、いくつかの駅に停車しながらカゼッラの町まで運行したのです。開通式に走った列車は、4車両からなる旧式の蒸気機関車でした。
走行スピードがゆっくりだから、車窓を流れる周囲の景色をじっくりと眺められる(し、写真撮影もできる)のがこの列車のいいところ。最初の6キロ目までは海、ジェノヴァ市とその郊外の街並みなどが素晴らしく、次いで徐々にその眺めはポルチェヴェラ川やビサーニョ川流域の緑豊かな丘陵地帯へと変わっていきます。展望台さながらの列車が大きなカーブを描きながらサントルチェーゼを目指して登って行くと、周辺地域では最大の旧市街カゼッラに到着します。


カゼッラ鉄道から望むジェノヴァ

週末をこの地の別荘で過ごすことや近くの森林でのハイキングを楽しみにしている地元住民にとって、列車の運休は大きな痛手でした(残念ながら観光客は海方面に集中し、ジェノヴァの内陸部の絶景は見過ごされがちです)。
非日常的な気分を堪能できるジェノヴァ-カゼッラ鉄道は、一方で都心との間を行き来する山間部の住民の足として重宝な在来線でもあり、そういう意味ではこの列車本来の目的はある程度尊重されています。
終点のカゼッラまで、ケーブルカーの全走行距離は24キロ。スクリーヴィア川流域の北部に位置するカゼッラは、夏のリゾート地として最高のロケーションです。
その沿線にあるリゾート地には、あらゆるジャンルのレストランやトラットリア(こじんまりしたイタリア式のイン)が立ち並び、伝統的な郷土料理の古き良き味を今に伝えています。


ジェノヴァにあるカゼッラ鉄道の駅

路線の運行再開に際しては、カゼッラでは歴史的価値の高い写真が並ぶ写真展が行なわれ、近郊のサントルチェーゼでは列車の模型ショーも開催されました。
ハイキングやサイクリングがお好きなら、観光客の人混みや交通渋滞とは無縁の、スローなテンポで壮大な景観が楽しめるケーブルカーの旅はお勧めです。
ファストフード全盛の時代にスローフードを求め、猛スピードで現実世界を生きながらスローな旅に恋い焦がれる私たちだからこそ、こんなスタイルの旅が再び脚光を浴びつつあるのかもしれません。
路線沿いに数多くある見どころやアウトドアスポット、観光名所の中でも一番人気は「城めぐり」。これは、地域にある5つのお城を見学しながら回るハイキングコースです。
これらのハイキングのいいところは、バードウォッチングや地域の様々な動物を見る楽しみも付いてくること。

美しい森に囲まれたこのエリアは、生態系も多様です。この多様性を守ろうということで開設された野生動物復元センターは、親がいなかったり傷を負っていたり、その他何らかの困難を抱えている当地の野生動物を保護しています。
この森林地帯にはハリネズミやリス、キツネ、シカ、ヤマネ、アナグマに加えてツバメ、タカ、フクロウ、メンフクロウが共生しています。
長らく閉鎖された後の運転再開ということもあり、今や大人気のこの列車に乗ろうと思うなら、駅に行く前のオンライン予約は必須です。車内に自転車を持ち込みたい場合、自転車用のスペースは電話予約で確保できます。手つかずの自然が残る渓谷の中を探検するなら、自転車はまさに理想の乗り物と言えるでしょう。


田舎の景観

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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