年末年始営業のご案内
12月31日(火):18:00終了
2025年1月1日(水):全館休業
※各店舗の年末年始の営業についてはフロアガイドよりご覧下さい。

  • 2018.03.16
  • 甘い伝統菓子パンドルチェ
単なる伝統菓子にあらず。ランテルナ(灯台)のようにジェノヴァの代名詞のような存在。天然酵母を使ったパン種にシロップ漬けの甘いフルーツが練り込まれた姿は、ランテルナ同様、数百年前と変わらぬ面影を今に伝えるジェノヴァ名物の一つです。
何を言っているかといえば、これはリグーリア州のデザートの王様ことパンドルチェ・ジェノヴェーゼのお話です。

パンドルチェといえば、昔ながらのイタリアンパネトーネやクリスマスケーキにも似ていますが、大きさや生地の粘度や材料がそれらとは異なります。
イーストとバターと小麦粉からなる生地にシダー、オレンジの砂糖煮、オレンジフラワー ウォーター(またはベルガモット)、フェンネルシード、レーズン、松の実(これはペストソースにも入れますね)を加えます。
パンドルチェには、厚いタイプと薄いタイプがあります。薄い方はパン・デ・ペスカトーリ(「漁師のパン」という意味)と呼ばれ、街のベーカリーでいつも売られています。

自宅で作ったパンドルチェは、貧しい人やホームレスの人にあげるためのひと切れを取っておけと言われます。また2月には、縁起がよいとされる月桂樹の小枝を飾ったパンドルチェを毎週日曜日の食卓に出すという伝統もあります。その場で最年少の人がケーキを切り分け、最年長者がそれを招待客に配るというのが決まりです。
ジェノヴァ市界隈に点在する職人工房やベーカリーでは、今でも由緒正しいレシピと手作りにこだわった製法で本物のパンドルチェが製造されていますが、大量生産バージョンの「スイートジェノベーゼケーキ」なら、イタリア全土のスーパーマーケットで手に入ります。
このジェノヴァ名産品を製造している職人工房の中には、見学可能なところもあります。工房の敷地に入った瞬間、独特の香気に気付くでしょう。生地とレーズンを混ぜているときの香りが空気中を漂っているのです。
最上級の「ケーキ」たちはジェノヴァのパティスリーに向けて出荷されますが、現在は海外へも輸出され、オーストラリアや米国、スウェーデン、南アフリカにも届けられています。
作り方は単純にして様々な材料を使ったパンドルチェは、20世紀までのジェノヴァの家庭では、いわゆる「おばあちゃんの秘伝の味」として世代から世代へと受け継がれながら頻繁に作られていました。クルミや松の実が入っていたりいなかったり、砂糖の種類もまちまちだったりと、その家庭ごとのレシピがあるようなお菓子だったのです。
パンドルチェをしっかり膨らませるには、イースト液種(スターター)は欠かせない原料でした。どんなに時代が変わっても、伝統というのはたくましく生き残るもの。ケーキ屋さんやパン屋さんでも買えるお菓子にはなりましたが、小麦粉、ベーキングパウダー、砂糖、レーズンバター、砂糖煮のフルーツ、松の実に加えて、長時間にわたる待機や調理、たまさかの「重労働」を乗り越える辛抱強さなど、必要な材料や技術は百年以上前から一切変わりません。
日本でも「ひと切れのリグーリア」を味わいたい方のために、パンドルチェ・ ジェノヴェーゼのレシピをご紹介しましょう!

1キロ分のパンドルチェの材料:
イースト液種(スターター) 200g
中力粉 250g
バター 80g
砂糖 120g
レーズン 250g
お好みのフルーツの砂糖煮 200g
松の実 20g


すべての材料をボウルに入れ、オーソドックスな円盤状(下の写真参照)にまとまるまで捏ねたら、生地が膨らむまで約16時間寝かせ、170度に温めたオーブンに入れて焼きます。
焼き上げたケーキは十分に冷ましてから食卓に出してください。
バニラアイスクリームか泡立てた生クリームをケーキに添えます。


レーズン入りの伝統的なリグーリア風パンドルチェ

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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