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  • 2019.02.13
  • 我が土地ご自慢の「果実」、キノコのお話
キノコと言えば、種子を持たない地上の果実のようなカラフルな見た目でありながら、有毒なものは私たち人間に脅威を与えたりもする、そんな存在ですね。キノコは植物と深く関わり合うことで成長します。植物と共生関係を持ち、生き残るために植物や木々の根の部分と密接な関わりを保ちながら相互交換を行う種類が多いのです。
人類が生活にキノコを取り入れた歴史は非常に古く、先史時代にはすでに、果物や植物が不作の年に森で調達できる食料として扱われていました。シャーマンたちが行う儀式にもなくてはならないものだったし、特に有毒なキノコは毒殺用の武器として使われていました。
リグーリア州の森について語る時、キノコの話題は避けて通れません。山と海に挟まれた地形特有の多様性に富んだ環境があればこそ、この辺一帯の土壌は価値ある遺産として受け継がれてきたのです。
気候と豊かな森に恵まれたリグーリア地方の森林は、いずれもキノコの宝庫。1年のうち少なくとも9~10ヶ月間はキノコが採集できるほどなんです。
リグーリア州ではキノコの季節の始まりは2月頃とされていますが、一番人気のポルチーニは秋から手に入ります。
俗にポルチーニ(イタリア語でporcino)と呼ばれているものは、実は形態学的特徴や時期、産地がそれぞれ異なる4種のキノコの総称なんです。
夏の中盤から寒くなり始める頃まで盛りの時期が続く、通称Boletus edulis(ヤマドリタケ)は、主にブナの森を中心にモミやその他の木々でも育ちます。ポルチーニの中でも風味も価格も別格で、とりわけ人気が高い品種です。


フレッシュなポルチーニのパスタは季節のご馳走のひと皿


夏の終わりから秋にかけて豪雨に見舞われた結果、今年は特にキノコの出来が良く、リグーリア地方のキノコはめでたく大豊作となりました。
キノコの旬は秋だけと思い込んでいる人が多いのですが、穏やかな気候と海のおかげで、リグーリア州では冬になってもキノコ狩りができるのです。ただ、冬のキノコを求めるファンはあまり多くありません。地元の商店に売って利益を得ようとポルチーニ茸(収穫時期は秋のみ)だけを狙う人が多いことに加えて、寒くなるにつれてわざわざゴム製のブーツを履いて森に行くほどの気力が削がれるのも原因のひとつかもしれません。雪模様になったり雨がダラダラ続いたりすればキノコ狩りの意欲も半減するでしょうし、強風の日も同様です。それより何より、この季節に採れるキノコにはそんなに有難みがないと思われている点が大きいのではないでしょうか。
けれども実は、冬のキノコこそが必要不可欠というレシピもあるほどで、官能的な味わいを持った素晴らしいキノコが見つかるのです。
キノコ採集の資格(地域で義務付けられている)を持っている友人に、この時期に採れるキノコの代表的な種類を聞いてみたところ、boleto d'inverno(冬に採れるイグチ科のキノコ)、leccino(ヤマイグチ)とウィンターポルチーニを教えてくれました。最後に挙げたのは本物のポルチーニではなく、ずんぐりと太い茎と丸くて色の濃い笠がポルチーノにそっくりの品種です。
しかし、冬のキノコの代表格を挙げるならfungo dell’olmoで決まりです。わずかな酸味と表面を覆う不凍物質が調理しても完全には消えず、スッとした後口が残るのが特徴で、知名度も高くないこの品種の好みは分かれるところでしょう。このキノコはスープに使うのがおすすめ。ニレの木(elm)の根の部分で採集できるのでこの名前が付いたのだとか。
この地方ではキノコを主役に据えたフェスティバルや祝祭があちこちで行われます。中国のスズメバチが媒介する菌の影響を受けて一時は絶滅の危機に瀕していたものの、つい先ごろようやくリグーリアの森に蘇った地元産の栗の収穫祭も兼ねて、キノコと栗のフェアを同時開催するところも多いようです。
トルコ産やスペイン産、ポルトガル産、ギリシア産などを中心にスーパーマーケットで出回っている輸入物の栗を知らずに買ってしまう可能性は今も少なからずありますが、我らがリグーリア産の栗が復活したことは、大いに喜ぶべきニュース。安全な品物を継続して届けようと骨身を削っている地域の生産者とその商品を保護するためには、店頭で販売される栗の産地のチェックを強化する必要があります。商品の生産元が確かなものを買いたければ、地元の農産物直売所で買うのも良し、農家に直接出向くのも良し、森で開催される栗拾いイベントに参加できればさらに理想的です。森を散策しながら拾った栗をカゴに集める楽しみも味わえるなんて、まさに一挙両得というものですね。


肉厚で美味、リグーリア産の栗

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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