• 2019.05.30
  • 山をさまよう – ハイキングと伝説
山岳地帯ならどこでもそうですが、リグーリアン・アルプスも変化に富む景観と多彩な顔を見せてくれます。
澄み切った繊細な美しさをたたえた森や草原、牧草地といった自然のたたずまいと、造り上げられた風景が、自然と人間の創造物の絶妙なバランスをかもし出しています。
それだけでなく、地元の人々にとっても旅行者にとっても、この山々はさらなる発見に満ちています。そのひとつが芸術的側面です。数世紀にわたる歴史が、この山々に重要な痕跡を刻んできたのです。先史時代の遺物から初期農耕時代に造られた英国式石積みまで、中世の建造物やバロック様式の教会やお城から、この地方を支配したローマ人たちの作った石造りの橋、さらにはバンカーや要塞まで。


リグーリア州内陸部のお城

この山々で目にすることのできる芸術作品の中でもひときわ素晴らしいのは、彫刻のほどこされた門や絵画、先史時代のフレスコ画で、この地方がどれほど長い歴史を持っているかを教えてくれます。
私が調べた限りでは、そういった作品のほとんどはだれが造ったものかわかっていませんが、遺物のいくつかはレッツォにある博物館で見ることができます。
リグーリアでは、山道や砂利道を通って谷からこの地方の保護公園まで行くことができます。ローマ人が貿易のために使った古道も修復されていて、それをたどっていくと、リグーリアン・アルプスと海を見渡せる360度のパノラマが展開される息を呑むような光景に出会えます。
分かりやすい山道(このハイキングコースについては出版物もたくさん出ています)のひとつを歩いていけば、洞窟や小さな湖や滝に出ます。
リグーリアン・アルプスの環境教育センターによるワークショップや研修、野外活動も頻繁に開催されていて、山歩きやハイキングを楽しむ人たちのためにさまざまなプランが用意されています。
Testa d’ Alpeの森やバルバラ川の渓谷を散策したり、ロッケッタやピーニャのような歴史ある町や魔女の村として知られる伝説的な町トリオーラを訪ねたり、この山々は私たちが歩きまわって心ゆくまで自然を味わえる緑の懐なのです。
ほんとうに豊かな歴史と文化を育んできたこの山々では、自然を満喫するのはもちろん、この地方の民俗を学ぶこともできます。この地方にはたくさんの言い伝えがありますが、そのうちの「黄金の蝶」は、古来の神秘、シャーマニズムの儀礼、不思議な天文学的現象がないまぜになった伝説です。。
この現象はますます世間に知れ渡り、夏至にサンロレンツォ山に行ってそれを見ようと思う人が増え続けています。
さて、その正体は?
四つの菱形の石の間にできた穴に夕陽が差すとき、そばの岩の上に大きな黄金色の蝶の映像が浮かび上がるのです。わずか数分間の現象ですが、固唾をのむ瞬間です。言い伝えによると、そこは生と死の循環を巡る豊饒さを崇めるいにしえの場で、有史以前の象徴主義と電磁力が融合した地点なのですが、この現象は科学的にはまだ解明されていません。
リグーリアの山岳地帯に広がるこの保護公園には、マグラ川沿いの800キロを超えるハイキングコースやアルタ・ヴィア・デイ・モンティ・リグリのコース、それに数えきれないほどの丘陵地帯の小道が走っています。そして目を見張るような河川開発もあいまって、この一帯はボートやカヌー、キャニオニング、ラフティング、カヤックの愛好者たちを惹きつけてやみません。
でもこの公園にあるのは、大小様々な川だけではありません。川沿いの一帯に加えて、岬や海岸沿いの遊歩道や魅惑的なスイミング・スポットもあるし、バラエティに富んだ海の遊覧の旅のスタート地点にもなっています。
そして古い村やお城がサルザーナからアメーリアまでの一帯に点在し、あちらこちらで歴史ある村々やローマ時代の遺跡を見ることができます。


海岸沿いの遊歩道から見える魅惑的なスイミング・スポット

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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