• 2019.06.13
  • 発見——ジェノヴァのリーギ・ケーブルカー
ジェノヴァの町には歴史あるケーブルカー路線が3つあります。サンタンナ線と、ゼッカとカステラッチョを結ぶ路線、プリンチペからグラナローロまで運行されている路線です。
海と急峻な丘に挟まれた独特な地形のせいで、ジェノヴァは土地が狭く、住むのに骨の折れる場所でした。延々と続く急勾配を上り下りするには、げんなりするほど長い階段や幅の狭い階段を使うしかない場合が多く、行政は、その土地の状況にぴったりで、市内の交通渋滞や公害とも無縁な便利な地元民の足として、ケーブルカーという交通手段を敷設する必要に迫られたのです。

1871年にスイスのルツェルンでサー・ジョセフ・ブッチャーがフィッツナウ登山鉄道を開設しました。町とそのすぐ後ろにある丘の上にスイスの企業家が建てたばかりのホテルを結ぶ鉄道です。その20年ほど後にブッチャーはジェノヴァを訪れ、カステラッチョ周辺の丘陵を登っていたとき、そこに同じような鉄道を敷設することができるのではないかと思いつきました。
そのアイデアが実を結んで、1897年にジェノヴァ市はジェノヴァ初のケーブルカーを開設しました。スイスのリギとよく似ていることから、リギのドイツ式発音のリーギと名を変えた山の頂上との間を鉄道で結ぶことになったのです。

リーギ・ケーブルカーは、今も丘の上のカステラッチョ周辺とまちの中心部のラルゴゼッカとを結んで運行しています。
この路線には、カルボナーラ、サンニコラ、マドンネッタ、プリヴェ、サン・シモーネなどの中間駅があります。
もとは二つの別々の路線があったのですが、1966年に一つの路線として編成し直されました。
122年の間、ジェノヴァの人々にとっても旅行者にとっても、この丘陵はぜひとも行くべき場所であり続けています。そこへ行けば眼下の海岸を臨む一大パノラマを堪能できます。

このケーブルカーの車道沿いに見られる景色がそのまま観光名所として知られています。主要駅は歴史的中心地にあって、駅近くにはガリバルディ通りや美術館名高い港の路地や古い港があります。
マドンネッタ駅は同名のマドンネッタ・サンクチュアリに面していて、その中には昔ながらのキリスト降誕の場面を象った彫像が、ジェノヴァの中世の生活場面を再現した彫像群とともに安置されています。高台にある終点リーギ駅からは擁壁公園が広がり、そこを起点とするたくさんの小道が、フォルテスペローネからフォルテディアマンテを含む、町の数々の要塞へと続いています。類まれな絶景を楽しむこともできるし、ケーブルカーの旅は、駐車場があるか心配することなくジェノヴァの観光スポットへ向かい、住宅街と海との間の縦の眺めを満喫できる極上の移動手段です。高台のてっぺんに位置する終着駅から石を投げれば届くほどの距離に、レストランがあって、そこでは展望テラスでくつろいで絶景を臨みながら、ジェノヴァの伝統料理を堪能できます。

このケーブルカーは町の中心部と丘陵地帯を結ぶ、なくてはならない交通手段で、ラッシュアワーには15分おきに運行しています。この小さな路線は地下鉄として機能しており、標高300メートルまでをカバー、走行距離は1.5bキロを超えますが、そのうちの半分はトンネルの中です。

近年、ケーブルカーは機能向上を目指すさまざまな取り組みがなされてきました。障害者用のスロープやエレベーターを設置したりしてバリアフリーを実現し、信頼性を高めるためにオンボードシステムが改良され、乗客向けの情報を表示する可変式パネルも導入されました。


リーギ・ケーブルカー

2年前の開設120周年記念日には、AMT(ジェノヴァ市公共交通運営機関)が、一日無料乗車サービスを実施して、たくさんのジェノヴァの人々が祝賀行事に参加し、記念銘板のお披露目やアルペンホルンの代表格アルプホルンの奏者二人による演奏を楽しんだり、ジェノヴァ方言で歌うジェノヴァ民謡の古典Ma se ghe pensoのノスタルジック・バージョンに耳を傾けたりしました。記念銘板は、このケーブルカーを敷設し、今もジェノヴァのAMTと協力関係にあるスイスの会社から贈られたものでした。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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