現在、医薬品の配達や買物、高齢者家庭の雑用の支援などに多くのボランティア団体が対応しています。また、町を自由に行き来することができず孤独に陥りやすいこの時期、人々が他人と交流できるアプリが開発され、ビデオで読書する子どもたちのためにお話の読み聞かせをするボランティアが生まれ、バーチャルな宿題部屋を通じて子どもたちの学校の勉強を見てあげる、オンラインのプラットフォームも立ち上げられました。
自治体が導入した取組みには、人助けがしたくても方法がわからないという人たちを集めるものもあります。
イタリア各地で困っている人を助けたいと願う住民が自発的に立ち上げた取組みのことを、スペーザ・ソスペーザ(spesa sospesa)と呼んでいます。韻を踏んだこのイタリア語を訳すと「ハンギング・グローサリー(吊された食料)」。
厳しい経済事情を抱える人たちが暮らしに必要なものを持って行けるようにと親切な人々が持ち寄ったパスタやパン、お砂糖、ミルクなど日常に欠かせない食料品をカゴに詰め、バルコニーから吊り下げたのが、この「ハンギング・グローサリーズ」というわけです。この取組み(テレビでも推奨されました)のモットーは「買える人は与え、買えない人が受け取ろう」。つまり、寄与できる(寄与すべきと思われる)人々が提供し、寄与できない人々は、無料の食料が得られるこの機会を利用してもよいということです。
ハンギング・グローサリーズは「吊り下がっている」とは限らない
長期休業中のレストランやカフェの中には、消費期限が迫った物資を困窮している家庭や地元のホームレス避難所に寄付したりするところもあります。
経済的問題に限らずとも、困っている人々を助けるためのボランティア活動もたくさん始まりました。家に小さな子どもを残して日々の買物に出かけられないシングルマザー、ひとり暮らしや身内が遠距離に住んでいてスーパーに行けない高齢者のためにと、ボランティアの若者たちが食料品の買い出しを代行する無料サービスの案内チラシを玄関先に配っています。
多くのお店やスーパーも無料配達サービスを行っていますし、地域のホームレスや動物のシェルターに寄付するために食料品を募っているところも少なくありません。
実際、貧困層のための「ハンギング・グローサリーズ」の立ち上げの後、いくつかの自治体で同様の活動が始まったのですが、これらには飼い主がいなかったり、いても貧しかったりする犬や猫の支援が新たな目的として加わりました。この取組みを推進しているのはDepartment for the Protection of Animals and Stray Animals(動物愛護局)です。
ペットのための食料を集めようというこの取組みは、地域の活動の中で、非常事態による困難に見舞われながらも、地域の猫と犬のコロニーの支援という多大な責任を果たし続けるボランティアで成り立っています。彼らは、きわめて厳しい局面にさらされている地域の身寄りのない動物たちに、有効な手助けを行おうとしているのですね。
スーパーマーケットのハンギング・グローサリーズが貧しい人とペットを救う
鉄道の駅で、ホームレスの人々のための食料とテントの支給に協力する社会奉仕団体もあります。彼らはとくに弱い人たちや高齢者、身体障がい者、孤立した状態にある人々の支援も、主にクラウドファンディングによって行っています。この費用は多くの場合、税金が控除されます。
そうした自治体の取組みに加えて、食料やおもちゃ、衣服を恵まれない人々に届けるオンラインの連帯ネットワークも存在します。彼らはさらに、お年寄りや孤独を感じている人がその番号にかければ心理的なサポートが受けられる電話サービスも運営しています。
今回のコロナ危機によってうつ病やDV、児童虐待、摂食障害といった問題が増加していること、このような厳しい事態にあって実に多くの人が支援を必要としていることが調査によって確認されました。
公的な地域社会福祉センターは通常どおり窓口を開け、大幅な介入を行ってさらに多くの人々の支援につとめています。
また、物資を早く届けられるようスーパーや薬局で行列に並ぶ必要がないなど、ボランティアの人たちには各自治体の定めによっていくつかの特権が認められているのです。