• 2020.11.02
  • トリュフ、イタリアの逸品
カレンダーを見れば、季節はもう秋ですね。というわけで、秋の2大キーワードであるキノコとトリュフの季節の到来です!
貴重かつ希少な、地下に埋もれた「菌」であり「キノコ」であるトリュフは、オークやヘーゼルナッツ(ハシバミ)、ポプラなど共生植物の根っこ近くの地中に自生します。
共生植物とは、トリュフが育つのに好都合な共生関係にある植物や木のことですね。
ルネサンス時代の宮廷文化の頃から珍重されてお値段も高いトリュフは、イタリア美食界の花形スター。特に貴重とされる白トリュフ、そして黒トリュフの2種類のトリュフの輸出国として、イタリアは一大勢力を誇っているのです。


希少で値の張る白トリュフ

ピエモンテからロンバルディア、はたまたトスカーナからウンブリアまで、イタリアの各州には香り高く風味が濃厚なトリュフを使った地域自慢の伝統料理のレシピが数多くあります。世界で最高のトリュフが採れるともっぱら評判のランゲ地方に近いこともあり、もちろん我らがリグーリア州でもトリュフの調理法はすっかりおなじみです。
通常、トリュフは摺りおろして(ニュアンス的には「削って」の方が近い)パスタ、ローストした仔牛肉などメインの肉料理、目玉焼き、野菜やお肉のパイ、リゾットなどのトッピングにします。
黒トリュフはスプレッド類やオイルに加工するなど、いろんな料理に使われ、レアでお高い「白」の方は、調味料などに使われることはありません。家庭ではトリュフを生のままスライスして(特に白トリュフ)、または火を通したり摺りおろしやフレーク状(これは黒トリュフ)にしたりして使うのが一般的です。
卵のパスタにバターと薄くスライスした白トリュフをからめた「タヤリン(極薄の平打ちパスタ・タリアテッレ)のトリュフ添え」は、超有名なピエモンテ地方の伝統料理です。


タリアテッレにトリュフを添えて

そろそろリグーリア地方の話をしましょう。
トリュフを添えたタリアテッレはリグーリア地方でもよく作るものですが、私たちはそこにアンチョビを入れます。すると海と森のそれぞれの恵みが出会い、この地方のいいところを存分に味わえるひと皿が完成するのです。
確かにこのレシピなら、アンチョビのしょっぱくて味わい深い潮の香りと、トリュフのかぐわしい香り(と味)が同時に楽しめますよね。
ジェノヴァではトリュフ入りのペストというものに出会ったことがあります。これは、バジルと松の実を使った伝統的なペストソースにトリュフを加えたアレンジ版です。トリュフをプラスすることで、昔ながらのジェノベーゼ・ペストもひと味ちがうものに。非の打ちどころのない洗練されたハーモニーが素晴らしく、ニョッキやスパゲッティにもぴったりのソースです。

トリュフは高タンパク・低脂肪なうえにマグネシウムやカルシウム、カリウムなどの重要なミネラルも含み、さらにアンチエイジング効果で知られる天然の抗酸化物質も豊富な食材です。
コレステロールフリーのトリュフは心血管機能を促進するほか、含有するマグネシウムの刺激作用で腎臓の解毒機能を助けてくれる効果もあります。ただし肝臓疾患や尿砂(小さい結石)、アレルギーなどがある場合、トリュフはあまりお勧めできません。食べようと思うなら、まずは医師の指示を仰ぐのが賢明です。
トリュフの希少性が高いのは、生育が地理や環境、季節といった要因に大きく左右されるからです。トリュフとは何ぞや、という最初の問いに戻ればその理由は簡単にわかります。トリュフはキノコの一種で、他の大半のキノコと同じように雨不足や日照りが最大の敵なのです。
現在は犬(その名も「トリュフ犬」)が地中のトリュフを嗅ぎ当て、人間がそれを採取するのですが、かつてその探偵役を務めていたのは、持ち前の嗅覚の鋭さを買われた小ブタでした。成熟したトリュフは絶え間なく力強い香りを発します。それを嗅ぎ付けた野生動物たちが地面を掘り起こして胞子を拡散してくれれば、トリュフの種の繁殖が約束されるわけですね。
トリュフ栽培も長い間行われてきましたが、特に貴重な部類のトリュフについては、その結果は芳しくありません。
トリュフ犬を飼っている友人の話では、オモチャにトリュフの香りのスプレーを吹き付け、犬に森の中でオモチャを探させる宝探しごっこ的なトレーニングを年中やらなくてはならないのだとか。
この「ゲーム」を繰り返すことで、トリュフの香りを感知する犬の嗅覚が研ぎ澄まされるのだそうです。
9月から11月頃の盛りの季節になると、彼らは夜、犬を連れてトリュフを「狩る」ために森へと向かいます。わざわざ夜に出かける理由は、大気中の水分量と深い関係があります。ほんのわずかな香りでもラクラク嗅ぎ付けられるほど犬の嗅覚が最も鋭敏になるのが、この夜明け前の数時間だということです。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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