• 2020.11.10
  • 秋の(最後の)リグーリア遠足日記
こちらイタリアの季節は秋。つまり、キノコと栗が旬を迎えるとともに新型コロナウイルスによる各種制限も始まったということです。後者については初夏の段階で発表されていましたが、残念ながらやはり現実になりました。コロナウイルスが再び勢いを増し、感染者数が急上昇中のイタリアでは、全国レベルでも地域レベルでも毎日のように制限事項が更新されています。
悲しいことにこの先の数週間、制限はさらに厳しくなっていくと思われます。せめて再び全面的ロックダウンが宣言される前に、私たちはせいぜい野外に出かけて楽しんでおこうとしているのです。
中世の村の落ち着いた雰囲気が大好きな私は、この季節になると見事な紅葉が楽しめるネルヴィア渓谷に行ってきました。
地元の言葉で「日当たりが良い」という意味の名を持つネルヴィア渓谷があるのはリグーリア州のまさに端っこ、フランスとの国境沿いです。
日差しに恵まれ、1年中過ごしやすい気温のネルヴィア渓谷。町の大広場ではオイル祭りや春祭り、バレンタイン祭りやパンサローラ(ご当地の甘い揚げ菓子)祭りなど、季節ごとにさまざまなフェスティバルが開催されます。


揚げ菓子のパンサローラ

今年は災難によってすべての祝祭が中止となる憂き目に遭いましたが、この渓谷の村々はアーティスト、とりわけここにある家々のファサードの壁画作者であり、しょっちゅうピアッツァ(広場)のカフェにたむろしている画家たちから、こよなく愛されています。
町を象徴する存在として中心部に教会があるのは、イタリア全土に共通の特徴です。ここにある村々は石で造られていて、ヘーゼルナッツとヘーゼルナッツクリームの産地としても知られています。ネヴァ渓谷もこのネルヴィア渓谷の近くにあります。
私が訪れたサヴォーナ県のカステルヴェッキオ・ディ・ロッカ・バルベーナ(Castelvecchio di Rocca Barbena)という村は、アルベンガからたった15分で行けるところにあります。
中心にそびえ立つお城のまわりを円く取り囲むように作られたこの集落は、ネヴァ渓谷で最初の、そして最も美しい城壁に囲まれた村です。このお城は、かつてリグーリア州西部とピエモンテ州をつなぎ、オイルやワイン、小麦、材木などの交易が行われた「塩の道」の主要部に建てられています。大きな正門、テラス式の屋根、アーチ型の屋根裏部屋を備えた古い石づくりの家並みがこの村の特徴です。アサンプション教会(一部はバロック様式)と、17世紀から残る恵みの聖母教会(the sanctuary of the Madonna delle Grazie)は、ここを訪れたならば必見のスポットです。


カステルヴェッキオ・ディ・ロッカ・バルベーナの町

昔の道具類のちょっとしたコレクションを収蔵している古代工芸博物館は常時開館していて、オリーブの収穫方法やオイルの製造過程について学ぶことができます。オリーブオイルは実際にこの村の特産品。エキストラバージンオイルはコールドプレス(低温圧搾)製法により作られますが、その多くは今でも昔ながらの重い石臼を使い手作業で作られているのです。
ここから最も近い大きな町、アルベンガは、ローマ時代までさかのぼる歴史だけでなく、アルベンガ産の紫アスパラガスとアーティチョーク、「オックス・ハート」と言う名の特別なトマト(スローフード・プレシディオ対象の農産物なので、これについては別の機会に詳しく書きます)の、リグーリアご自慢の農産物3種の産地としても知られています。
歴史地区の通りをまっすぐ歩いていると、城壁が見えます。海の方から、またはアウレリア街道からこの町に入れば、遠くからでも中世時代の塔が望めるでしょう。そのうちのひとつはインガウノ市民博物館になっていて、碑文や納骨壺、石のかけらなど、ローマ帝国とビザンチン帝国時代の古い遺物を展示しています。
アルベンガはD.O.C.ワイン(統制原産地呼称ワイン)の一大産地でもあります。ここで栽培しているピガートという品種のブドウを使ったワインは、魚料理との相性が抜群に良いのです。
今回のブログの最初に書いたように、秋と言えば栗のシーズンですね。街角には栗用ロースターが立ち、この季節の風物詩である焼き栗を三角に折った包みに入れて売り出す姿が見られます。


アルベンガの町の中心にある塔

リグーリア地方では、栗を使ったデザートをたくさん作るのですが、砂糖がけして艶を出した栗やピューレ状の栗をよく使います。
私たちは今の季節、ラスクやトーストに塗ったり、ケーキのフィリングとして使ったりする、甘味たっぷりでとびきりおいしい、みんなが大好きな栗のスプレッドをこしらえておくのです。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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