• 2021.02.01
  • 聖堂と提灯(ちょうちん)
リグーリア州の丘陵地帯にあるサントゥアリオという聖堂は、地元住民にとっては昔から特別な場所です。
丘に囲まれたこの小さな集落の守護聖人は慈悲の聖母(Madonna di Misericordia)で、このあたりでは大みそかになると、積み上げた木に火をくべて大規模なかがり火を焚いて聖母を称える習慣があります。このかがり火は、新しい年の繁栄を祈願して練り歩く翌日の元旦に行われる行進の前祝いでもあります。

今年は広場でのかがり火も元旦の行進もなくなりましたが、例年ですと、街の中心部にある大聖堂の前に信者が集まる姿が見られます。彼らは山の上にある聖堂を目指し、その道中にある9つの礼拝堂の1番目に向かって街の中を歩いていきます。この道行きのフィナーレは、聖堂の広場で司祭が執り行う大規模な盛儀ミサで、この場所は美術史家によって「地域で最も美しい広場」と褒め称えられています。
19世紀の美術館所蔵品を再び展示するため1950年代に開館した博物館がこの聖堂の隣に並んでいます。1980年代に全面改築され、現在は由緒ある宝物博物館と他の展示室とが、ひとつの順路でつながっています。この博物館の白眉は、聖母に捧げられた豪華なジュエリーなど貴重な収蔵品のある展示室です。ナポレオンによって3年も幽閉されたローマ教皇ピウス7世が、土地の人々への感謝を込めて1815年に「慈悲の聖母像」に戴冠したという、黄金やダイヤモンドなどの宝石をちりばめた王冠もそのひとつです。
当時の建築家や芸術家が美しく装飾を施した室内には、彫刻家ベルニーニが手がけた祭壇、画家カステッロが円天井や円屋根に描いた18世紀のフレスコ画などがあります。 他にも4つの大理石の祭壇があり、そのうちのひとつは17世紀に作られた装飾で彩られた雪の聖母(Madonna delle Neve)に捧げられた祭壇です。
この本格的な大聖堂は、数少ない年中無休の教会でもあります。毎日1回、週末には日に2回行われるミサのためにやって来る信者は後を絶ちません。

毎年3月になると、丸や四角の提灯を吊り下げて聖母マリアの出現を称えるのもここの習わしのひとつ。なぜならば、1536年3月18日、聖母マリアがこの谷の農夫の前に現れたという伝説があるのです。
灯りがともる歴史ある提灯を街じゅうに飾って3月の守護聖人の日を祝う、この古き良き伝統を復活させようと、地方文化課と教育課が手を組み、独自の取り組みに着手しました。この企画の一環として、年の初めには新年の希望のシンボルとして提灯を飾るなど、若い世代にこの習慣を継承しています。
徐々に忘れ去られつつある伝統を広めるために、自宅で提灯を「DIY」つまり自作してもらおうと、手順を追って作り方を説明するチュートリアル動画が同プロジェクトによって作られることになりました。
独自の専用動画を制作するというこの提案は歓迎ムードの中で承認され、一人の教師と若き学生たちが動画の制作に当たりました。動画は、リサイクル品や手に入れやすい素材を使ったカラフルな提灯の作り方を、シンプルかつわかりやすく伝えるものに仕上がっています。


サントゥアリオ(聖堂)


リサイクル素材で作ったハンドメイドの提灯

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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