• 2021.02.10
  • 迷走するイタリア閣僚政令(DPCM)
イタリアは、新型コロナウイルス感染拡大の第2波の渦中にあります。
残念ながら現在、このパンデミックにおいて世界各地での感染者数は最多記録に達してしまいましたが、困ったことに、昨年の3月から5月まで続いた1回目のロックダウン以降、事態に対処できないイタリアの政治家の無能ぶりが明らかになっています。

この投稿に政治的な意図はありません。党の政治姿勢に関わらず、今のような局面をどうにかできた政党はなかっただろうと思うからです。
イタリアの現状について言えば、昨年の5月初旬と状況は変わらず、本質的な対策の面で深刻な問題を抱えています。集中治療は補強されず、交通機関の乗車率の問題も未解決(乗車率50%という目安に対してバスも電車も満員のまま)、休業を余儀なくされたレストラン、商店やジムの経営者は政府からの補助金(給付が約束されています)を未だに受け取れず…といった具合。
イタリア人の間では、新たな全面ロックダウンも近いという考えが高まっていますが、市当局や地域間の関係のこじれとともにスタートした緊急事態の対応策に関してはとにかく矛盾だらけで、先ごろ発令された法令に順応する十分な時間もないまま、次の週にはまた新たな法令が発表になるという状態が続いています。
自治体からは行政トップの意思決定に関与できないままでいることに反発の声が上がり、また一方では休業に関してあまりにも責任が大きすぎるという不満の声も聞こえてきます。
先に述べたように、私たちはこの数か月間、イタリア閣僚政令(DPCM)の迷走ぶりをまざまざと見せられ続けています。感染抑制の名目で、基本的に1日おきに異なる規則を発令しておきながら、どの対策もその効果が現れるまでに最低2週間を要するなどと言い出す始末です。
政府は先週末も、中・大規模の商業エリア、ショッピングセンター内の必需品以外の商品を扱う店舗に対し、土・日と祝前日・金曜日の休業を要請する行政命令を出しました。
この法令によると、週末の大型店舗で販売が許可されるのは薬品と食料品だけです。ということは、それ以外の商品は販売禁止になるわけで、対象の商品は法によりお客さんが買えないようにテープや気泡シートで巻いておかなければならなくなりました。この法令は食品以外の商品(衣料品、おもちゃ、文具など)を扱う大型のスーパーマーケットにも適用されるので、そうした商品も同様に指定期間中は販売禁止となります。意味不明で笑える(そしてバカらしい)エピソードをご紹介しましょう。私の友人が、土曜日にドリンク用のグラスが必要になったのですが、必需品ではないという理由で買えなかったと言うのです。鍋は必需品扱いなのにグラスはそうではない。鍋やお皿は良くて、グラスはダメだそうです。店員がひとこと「蛇口から直に飲んだらどうでしょう?」と言ったとか。完全に訳が分からなくて、もう笑っちゃいますよね。
数か月のロックダウンの間、スーパーマーケットやショッピングセンターは週末だけでなく、曜日に関わらずこれらの商品の販売を停止しました。国の規定条項によると、食品と必需品以外の商品を扱う商店が完全休業となったので、小規模事業との競争上の不平等を避けるためにスーパーマーケットにも多くの商品を販売させなかったわけですが、これこそナンセンスというものでしょう。
新しい禁止条項は、週末にスーパーマーケットやショッピングモールに向かう人の流れを軽減し、買い物客の数を減らして混雑を避けるための措置だということですが、こんなルールはナンセンスです。「ちょっとそこまで歩きたい」だけの人たちは、サインペンやボトル入りの水が買えようが買えまいが関係なく外に出かけるでしょうし、お店で買えない物があるのならその分、より多くのイタリア人がネットショッピングを利用しますよね。イタリア人のお金は、すぐにでも売上げを出したい地域のお店ではなく、大規模なオンラインプラットフォームに流れていくだけでしょう。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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