• 2021.03.11
  • リグーリア・ブログ-魅惑のペストリー
家族が集まる典型的なイタリア式昼食では、身内の誰かがデザートやボトルワインなどの飲み物を持ってくるということを、前回のブログでお伝えしましたね。日曜日以外のデザートの定番といえば手づくりのケーキやティラミスですが、日曜のランチは例外で、地元のペストリー屋さんで買ってきたトレイ入りのペストリーをデザートに食べるのです。
ペストリーはひと口サイズのデザートで、伝統的なものから「ミニョン」と呼ばれる当世風のものまであります。地域によっても異なり、種類も豊富なイタリアの甘いペストリーですが、たとえばクリーム・パフのようにイタリア全土でみられるものもあります。これは、ホイップクリームやコーヒー、レモン、ピスタチオ、オレンジ、ラベンダーなどさまざまなフレーバーのカスタードをシュー生地に詰めた魅惑のお菓子で、粉砂糖やココアパウダーをかけたもの、アイシングやチョコスプレーをトッピングしたものもあります。
カスタードと季節のカットフルーツをかご型のショートクラスト・ペストリー(練り生地パイ)に詰めたフルーツバスケットは、さまざまなサイズとデザインで飾り付けも美しく、よく見かけるペストリーの代表格です。
ひと口サイズのカンノーリやティラミス、クロスタータ(ジャムパイ)などもイタリアの代表的なペストリーですね。
月曜日の定休日を除いて毎日営業しているペストリーショップですが、1週間の中でもいちばん混雑する日曜日に大きいトレイや特別なペストリーを買おうと思うなら、前もって予約した方がベターです。
ペストリーショップではチョコレートやトリュフ、ペストリー、特別イベント用のケーキなどが買えます。オーダーメイドのバースデーケーキやウェディングケーキ、各種記念日のケーキもありますが、お店のいちばんの稼ぎ時は日曜日で、人気の店は外に行列ができるほどです。
代々伝わるレシピを守り、年中いつも同じペストリーを売っているお店もある一方で、より現代的なペストリーショップではつねに「コンビネーション」を追求し、クリームと生地の新たなバランスを発見しようとチャレンジしています。多かれ少なかれ伝統的な食事の最後はもちろんのこと、いろんなタイミングで最高に甘美な味わいを楽しめる上質な味のミニョンは、今や特に人気の高いスタイルのペストリーとして、新たな味覚とライフスタイルに定着しつつあるのです。
では、当地リグーリア地方の伝統的なペストリーもご紹介しましょう。
ゴベレッティは、焼き型の名前が付いたお菓子。リグーリア地方に大昔から伝わるこの小さなペストリーは、パスタのトルテリーニのような形の練り生地パイにマルメロ(セイヨウカリン)のジャムを入れたものです。新しいタイプになると、アプリコットやモモ、ベリー類のジャムを使うことも。生地には小麦粉と砂糖、卵、バター、牛乳、フィリングにはマルメロかモモ、アプリコットなどのジャム、と材料はいたってシンプルです。練り生地にスプーン1杯分のマルサラ酒をかけておくと、風味がいっそう良くなります。
まさにリグーリアならではのデザートのサクリパンティーナには、ケーキとミニョンペストリーの2種類のバージョンがあります。150年以上の歴史があるサクリパンティーナはスポンジケーキの一種で、名前はルドヴィーコ・アリオストの叙事詩「狂えるオルランド」の主人公、サクリパンテに由来します。1800年頃に生まれたこのお菓子には2つのタイプがあり、古典版ではザバイオーネ・クリーム、現代版ではマスカルポーネ・クリームを使います。ザバイオーネを使うクラシックバージョンのクリームには卵黄だけでなく全卵を使い、たっぷりのマルサラ酒入りのチョコレート・コーティングで仕上げます。
スポンジケーキにマルサラ酒が十分に浸みるよう、通常は前日のうちに用意するデザートです。
ヘーゼルナッツとチョコレートを使った楕円形のペストリー「アラッシオのキス」(別名「リヴィエラのキス」)は、半球型の2つクッキー生地の間にチョコレート・クリームを挟んだお菓子です。



ティラミスのミニョン、クリーム・パフ、カンノーリ、サクリパンティーナなど、代表的なペストリーが並んだトレイ

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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