かつてのリグーリア州は、牧羊と少量の作物栽培で成り立っていました。歴史を遡って調べてみると、当時の人々がホップを育てていた時期もあったことが分かります。
リグーリア地方のビールには、ブドウ園やブドウの木よりも古い歴史があります。当地に散在するビール醸造者たちは、何よりも原材料にこだわりながら、熱意を持ってかつてのリグーリア民の伝統を今に受け継いでいます。
私自身はまったくビール愛好者ではありません。実際、ビールは口にしませんし好きでもないのですが、私の夫はビール関係の仕事をしているのでビールのことなら何でも知っています。
夫に聞いた話では、リグーリア州には季節ごとのビールがあって、この厳しいご時世でも新進気鋭のブリュワリー(醸造所)が毎月のように生まれているそうです。
この土地との繫がりが強く感じられるのは、季節のビールです。春にはオリーブの葉を使ったビール、夏にはラベンダーの香りが付いたビールもあります。冬になれば、周辺の丘陵地帯で作られたハチミツを使った、アルコール度数の高いスタウトビールが地域の売上げナンバーワンとなります。(平常時には)製造技術の見学ツアーができて、上の階には試飲に加えて缶ビール・瓶ビールの購入もできるタップルームを備えているところも多いので、醸造所にはぜひ立ち寄ってみてください。
リグーリア州の首都ジェノヴァではクラフトビールの種類が実に豊富です。ジェノヴァには19世紀末からドイツの伝統を汲む醸造所が数多く存在していました。その大半は30年ほど前に廃業しましたが、1軒か2軒だけ今でもビールを造り続けているブリュワリーがあります。現在では歴史地区に行けば、クラフトビールを豊富に品ぞろえしているパブが集まっています。
ブリュワリーはジェノヴァ市内やその周辺の工業地域、都心部にもありますが、前にアマレッティ(甘くてほろ苦いビスケット)の記事でも触れた田舎町のミッレージモなどの風光明媚な場所にも何軒か存在します。
ジェノヴァ市から車で1時間ほどのサヴォーナの内陸地、中世時代の美しい男子修道院の中にある地元のブリュワリーは、サヴォーナ産の柑橘類キノットやカリッツァーノ産の栗、原産地名称保護制度(DOP)認証付きアプリコットなど地元特産の素材を使い、地域に深く根ざしたビール造りをモットーにしています。
コロナ禍になる前は、ジェノヴァ市歴史地区の路地や道路で食べものとワインが楽しめるイベント、ビラロンガが開催されていました。
これは、スペルバ(ジェノヴァっ子が付けたジェノヴァの愛称。「自惚れ」の意味)の美しい名所を巡りながら、10軒の屋台に立ち寄るというツアー形式の催しです。行く先々で、風味もタイプも異なる10種類のクラフトビールに加えてあらゆる味の食べものも一緒に楽しめるというわけです。
サン・ロレンツォ広場を起点とした順路にあるQRコードをスマートフォンで読みとれば、ジェノヴァの街の路地にまつわる歴史や秘話も知ることができるので、興味がある方はこちらもぜひ活用してみてください。この伝統行事も、パブで友達と飲む景気づけの一杯も、どうか早く再開できるようにと祈らずにはいられません!
コロナ禍以前の画像: 地域のブリュワリーでのビール試飲