• 2021.07.29
  • リグーリア・ブログ-麗しきリグーリアの郷愁と名声
こちらリグーリアでは、イタリアを、というよりも我らが麗しきリグーリア地方を舞台にした新しいアニメ映画が話題を集めています。
このアニメは、イタリアではストリーミング配信されています。
製作はアンドレア・ウォーレン、監督はアカデミー賞にノミネートされた経歴を持つイタリア人のエンリコ・カサローザです。

かくいう私もこの映画「あの夏のルカ」を配信プラットフォームで視聴しました。映画のタイトルのルカは、主人公の名前でもあります。
ひとりの少年と彼の親友がリグーリア・リヴィエラでひと夏を過ごすのですが、彼らの素晴らしい夏を脅かす、ある秘密があったのです。実はこのふたりは海の世界からやってきたシー・モンスターだったから…というストーリーです。
いわゆる「ネタバレ」になってしまうので、これ以上は説明を控えますね。
「あの夏のルカ」を手掛けたのは、監督、脚本家、そしてアニメーターでもあるイタリア人のカサローザ氏。ジェノヴァで生まれ、ニューヨークでアニメーションを学びました。
過去には「月と少年」 でアカデミー賞短編アニメーション賞、「アーロと少年」でアニー賞最優秀絵コンテ賞にノミネートされています。
「あの夏のルカ」のインスピレーションの源になったのは、監督自身の子供時代、夏に親しい仲間たちと過ごした思い出なのでしょう。
ですから、物語の舞台設定がリヴィエラの海辺の町なのも偶然ではありません。
細部の描写によって語られる「あの夏のルカ」の奥深さは実際にあった出来事に基づいているからこそで、これはアニメ作品では稀有なことなのです。
映画の舞台になっているポルトロッソは架空の街ではありますが、有名なチンクエテッレ(リグーリア海岸にある5つの村)のポルトフィーノもしくはポルトヴェーネレと、モンテロッソを組み合わせた名前のようです。
フィクションの街ポルトロッソは実際にチンクエテッレの村々のよいところを集めたような場所です。
現代のチンクエテッレではなく、50年代のリグーリアを彷彿とさせる舞台設定となっています。


「あの夏のルカ」の着想のもとになったチンクエテッレ

ポルトロッソの中央広場はヴェルナッツァという集落の広場に酷似しているし、港やカラフルな家並みはカモーリによく似ています。
ヴァリゴッティという街にある石畳の路地にそっくりな道や、この街の近くにあるサラセン湾を彷彿とさせる入り江も見つけました。


チンクエテッレ

ところで「あの夏のルカ」には、リグーリアのペストやイタリアンジェラート、ジェノヴァ名物フォカッチャも登場します。
そう、「あの夏のルカ」では食べものも重要な意味を持っています。主人公たちが有名なトロフィエやペスト風味のラザニアなどのパスタを誰が一番たくさん食べられるか競い合うのです。
外国では過小評価されているフォカッチャも、この作品でめでたくアニメデビューを飾りました。作品では魚がいたるところに出て来ますが、誰も食べる人がいないのは、メインキャラクターがふたりとも海からやってきたシー・モンスターだからでしょう。
ルカとアルベルトが訪れる洞窟は、グロッタ・デイ・ファルサーリという名で実在します。
実際にはチンクエテッレではなく、ノーリという街の近くにある洞窟です。
ヴァリゴッティからこの洞窟までは、ガッリナーラ島も近い西リグーリアン・リヴィエラの絶景を望むセンティエロ・デル・ペレグリーノのハイキングコースを歩いて行くことができます。
このコースがピルグリム・トレイルと呼ばれているのは、道中に古い教会がいくつかあるからです。それらも今は俗化されていますが、かつては聖地巡礼の目的地でした。
少年の成長物語で、素晴らしい友情が続くというストーリーでもある「あの夏のルカ」ですが、リグーリア地方に伝わる海の伝説もたくさん散りばめられています。セストリ・レヴァンテという街の誕生秘話もそのひとつです。
こちらは、セジェスタという名の世にも美しいセイレーンと彼女に恋をしたティグリオの物語です。


リグーリアの美しい海

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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