ここジェノヴァでも、ダンテの命日である3月25日を皮切りに彼に捧げるイベントが行われてきましたが、3月は新型コロナウイルスの影響による制限が多く、ほとんどのイベントは予定を変更して、夏のこの時期に開催されています。
先週末は、終日ノンストップでダンテの生涯と作品にオマージュを捧げる長時間のイベントが行われました。
学者や俳優、中世美術史研究家といった海外からのゲストを招いてのグループ・リーディングや座談会、会議などが催され、ジェノヴァ市のあちこちの路上では、ミュージシャンによるダンテの楽曲の演奏も楽しめました。
私が参加したのは「神曲」を紹介するするイベントです。2人の学者が詩人ダンテの最新版の伝記を取り上げながら、中世の歴史的・文化的背景とダンテとの関係性や、科学的調査と抽象的側面を融合させる必要性など、学校で教わらなかったような話を議論していました。
地元の文化施設とジェノヴァ司書連盟が企画運営を手がけた取り組みがたくさん見受けられました。
パンデミック下の非常事態のせいで当初の見通しより小規模ではありながら、ダンテの『神曲』地獄篇の舞台劇がフェスティバルのハイライトを飾りました。
座席数に限りがあったのでチケットを手に入れることはまず不可能でしたが、衣装に身を包んでの素晴らしいパフォーマンスだったということです。
地獄篇、煉獄篇、天国篇からなるダンテの物語を表現した花壇のインスタレーションも、やはり見事な企画でした。
自治体と花き協会が共同で主催し、労働組合協会の協力のもとに制作した花壇に、若いアーティストが手がけた、演劇に登場する人物を描いたパネルが設置してあります。
ダンテの像は芳香植物と地元産の花々で表現され、もうひとつの花壇には『神曲』の地獄、天国、煉獄の3つの讃美歌が、植物と花だけを使って3階層で表されています。
地獄を表した一番下の花壇では、冥府の炎を思わせるような色の花々の中に、アケローン川の渡し守であるカローンの姿を見ることができます。地獄のすぐ上の煉獄にいるのはダンテとウェルギリウス。最上段にある明るい色調の花壇は、彼らが旅路の果てにたどり着いた楽園を表しています。楽園を象徴する白と青の花だけを使ったこの花壇には、ダンテと彼の最愛の女性ベアトリーチェが佇んでいました。
残念なことに、パンデミック中のイベントの大半がそうであるように、ダンテがテーマのこのイベントも堂々とは開催できませんでした。
観覧チケットが手に入らなかったのは本当ですが、密集状態になることを危惧する当局の思惑に加え、誰でも参加できる地域イベントを開催できなくて自治体も士気が下がったのでしょうか、若干数の座席についても宣伝告知は一切ありませんでした。
昨今はこれと似たような話が多く、イベントがあると言っても無観客のものばかり。禁止事項である「大規模な集会」を回避したい市役所の判断で、この季節の風物詩である花火大会すら、この夏はなんと予告なく開催されているのです。
ダンテと彼の作品を再現した花壇
ダンテとベアトリーチェ