• 2022.03.11
  • リグーリア・ブログ―ファット・チューズデーは名物スイーツだらけ!
イタリアでは毎年、春が来る前にカーニバルを祝います。
クリスマスや他の祝祭と違って、カーニバルには定まった日がありません。カーニバルは2月から3月にかけて、シュローブ・サーズデー(告解の木曜日)からファット・チューズデー(脂の火曜日)の期間にピークを迎えます。栄養的な面はさておき、お菓子を中心に名物の食べものが並ぶ日であるので、「ファット・チューズデー」と呼ばれるようになりました。
四旬節の始まりであるアッシュ・ウェンズデー(灰の水曜日)の前の数日間に、それらの食べものを順々にいただくのが習わしです。明確なしきたりはありませんが、カーニバルでいただくお菓子のレシピの多くは伝統的なキャラクターに着想を得ています。なかでも道化役のアルレッキーノにちなんだレシピが多いのは、やはり彼がカーニバルを代表するキャラだからでしょう。
前に書いたブログに「キアッキエーレ・ディ・カルネヴァーレ(カーニバルの噂話)」をレシピ付きで載せたことがありますが、これ以外にもカーニバルのキャラクターにちなんだお菓子がたくさんあるので、いくつかご紹介したいと思います。
たとえば、「アルレッキーノ・ケーキ」は、練パイ生地にアプリコットジャムをのせ、ボタン型のカラフルなチョコレートプラリネをあしらったカーニバル用のケーキです。


アルレッキーノ・ケーキ

他にも名物スイーツといえば「カプリッチ・ディ・アルレッキーノ(アルレッキーノの気まぐれ)」。こちらはフィリングを詰めた甘い揚げ菓子で、伝統的に聖アントニオを称えて1月の第3日曜に作られます。レーズンや栗、アーモンド、松の実、ナツメグ、ジャムなどを入れるのが一般的です。
家で作るときは、生地を揚げる24時間前からフィリングを仕込んでおきます。こうすることで全部の材料がしっかり混ざり合い、出来上がったときに最高の味わいになるのです。


カプリッチ・ディ・アルレッキーノ

カーニバルはイタリアではたいへん根強い伝統であり、12星座のすべてに呼応するカーニバルのキャラクターが存在します。私の星座である双子座のキャラクターはピエロです。
ピエロは無邪気で天真爛漫でちょっぴりお人よし、そしていつも陽気なキャラ。
それなのに、ピエロの名の付くお菓子はありません。
12星座にひもづいたキャラクターで、その名前を冠したお菓子があるのはルガンティーノとステンテレッロです。
「ディスぺッティ・ディ・ルガンティーノ(ルガンティーノの戯れ)」は、半球形のスポンジケーキを2つ合わせて間にチョコレートクリームやカスタード、ジャムを挟んだお菓子です。フィリングを挟んだあとに砂糖とコチニール色素(赤い仕上がりにするため)、ローズウォーター、バニラ、シナモン、コリアンダー、クローブを加えたシロップに浸すのが特徴。「桃」にも関わりの深いこのお菓子は、仕上げにグラニュー糖の上で転がし、全体にお砂糖をまぶし付けることで、桃の皮の部分をリアルに再現しています。
ルガンティーノという名は、「尊大さ(arroganza)」と同じ意味を持つ言葉「ruganza」に由来します。
憲兵隊の帽子と赤い燕尾服にベスト、赤いズボンをまとうルガンティーノは、生意気で飾り気がなく、いささか尊大ともいえるキャラクターです。


ディスぺッティ・ディ・ルガンティーノ

カスタードクリーム入りの丸いシュー菓子は「グリ・イントリーギ・ディ・ステンテレッロ」と呼ばれています。
あまり知られていないのですが、これはもともとお菓子ではなく塩味の利いた材料から作る料理でした。
とある説によれば、球形の硬いパンのようなものに肉やトリュフなどを詰めた一品だったそうです。
このパンを出汁に入れ、温かい状態で食べていました。
おしゃべりだけどこわがりで、衝動的だけど機知に富んでいて独創的、弱い者の味方でもあるステンテレッロ。
黒の三角帽をかぶり、ペチコートの上にうすいブルーのジャケットかジレを羽織り、黄色のチョッキに黒い短パン(黒とグリーンのものもあり)、赤い靴下といういで立ちが目印です。


グリ・イントリーギ・ディ・ステンテレッロ

かつてのリグーリア州では、醜い者と美しい者を主役とした、美と醜のカーニバルなども伝統行事として祝われていました。こうした昔のカーニバルの伝統的なマスクは、善と悪の象徴に分けられていたのです。
以前は山車と一緒に行進するパレードや、「花のバトル」でフィナーレを飾る、花で装飾した山車のパレードも行われていたのですが、残念なことにコロナ禍以来、すべてのイベントが取りやめとなってしまっています。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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