• 2022.03.23
  • リグーリア ブログ-ジェノヴァの港に、カマリとフォカッチャは外せない!
カマリの歴史、それはジェノヴァの港、つまりジェノヴァの街そのものの歴史でもあります。
カマリ(camalli)というのは港で働く作業員のこと。仕事を効率化してくれる機械がまだなかった時代、列車で運送することになっている荷物を波止場で船倉から下ろすことができたのは、働き者で、見るからに屈強な体の持ち主の彼らがいたからです。
アラビア語に由来するライブ(raibe)という名で呼ばれていた倉庫に荷物を運び入れる作業は、力持ちの彼らの肩と腕にかかっていました。
ちなみに、カマロ(camallo)という言葉は、「疲れ」を意味するアラビア語のhammalから来ています。
かつてのジェノヴァはアラブの影響が強い街でした。かつて海洋国家として栄えたジェノヴァは、トルコ人をはじめとするムスリムの商人たちと商取引を通じて深く関わっていたからです。
船の貨物の積み下ろしはたいへんな肉体労働で、機械に頼れない頃は非常に骨が折れる作業だったはずです。
かなりの体力と骨身を惜しまぬ働きが必要とされるこの仕事では、頻繁な休憩と大量の食事が欠かせませんでした。
時代は変わり、今でこそ機械のおかげで港での貨物の積み下ろし作業は効率化されていますが、港の海運物流の中で最もハードで何より重要なのが、港湾労働者の仕事である点に変わりはありません。
仕事がきつければきついほど、そこで共に働く人たちの団結心は強まるものです。
ジェノヴァには今も港で働く労働者たちの組合が数多くあり、そのほとんどは仕事のあとに活動するサークルです。
私の母方の祖父は港のそばで働いていたので、港湾エリアで働く友人とも交流がありました。祖父に連れられて、朝ごはんにタマネギのフォカッチャとカプチーノを食べに行ったものです。リグーリアらしさを味わうにはこの朝食に限る、と祖父は言っていました。
タマネギのフォカッチャをミルク入りのコーヒーに浸す食べ方(イタリア人にとって、甘味と塩味を合わせるのは奇異な取り合わせです)は、祖父にとっての人生賛歌のようなものだったのですね。カマリが朝食に食べるものといえばタマネギのフォカッチャかアンチョビを添えたパン、昼食の定番は魚のフライと白ワイン(gianchettu)だったよと、祖父が教えてくれました。
タマネギのフォカッチャの伝統的なレシピをブログでご紹介するのは、今回が初めてですね。祖母が生前によく作っていたレシピをご紹介したいと思います。

タマネギのフォカッチャ
材料:
小麦粉 1kg
お湯
イースト 20g(少量のぬるま湯に溶かす)
エクストラバージンオリーブオイル 50g
塩 20g
麦芽 スプーン1さじ
白タマネギ 2個(あらかじめ千切りにして塩水に晒しておく)
イースト以外のすべての材料を合わせ、混ざったらイーストを加えて捏ねます。球状にまとめて覆いをかぶせ、20分おいて一次発酵させます。オリーブオイルを多めに塗った天板の上で転がし、生地の表面にオイルが行き渡ったら、1時間30分おいて二次発酵させます。最後に、生地を十分に伸ばし、指先でくぼみを作ります。タマネギの水気を切り、生地の上に散らします。キツネ色の焼き色が付くまで、250度のオーブンで30分ほど焼きます。

このフォカッチャに合わせる飲み物は? すでにお話しした「リグーリア式」に挑戦する心意気のある方は、ぜひ朝食としてカプチーノに浸して召し上がれ。または、昼食なら白ワインと一緒にいただくのがおすすめですよ。


特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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