• 2023.04.28
  • イタリアで育ち、イタリアの学校に通うということ
世界の中の地域によっては、幼稚園が義務教育になっていたり、少なくとも小学校への準備として、5歳の子どもたちに書くことや話すことを学ばせることが強く推奨されていたりします。
プリスクールが実際に教育機関となっていて、資格を持った教員が数学や地理などの基礎知識を子どもに教えている国もあります。
イタリアでは幼稚園は「asilo(アジーロ)」とか「scuola materna(スクオーラ・マテルナ)」と呼ばれていますが、どのような呼び方であろうと、子どもたちが塗り絵などをして遊ぶところで、それ以外のことは大してやらせません。
イタリアでは、子どもはできる限り「子どものままであるべき」と考えられているからでしょう。
もしかしたらこれは間違った考え方かもしれないし、永遠に「母親べったりの男の子」であろうとするイタリア人のメンタリティーの根源かもしれません(これは私の偏見ですが、あながち的外れでもないように思います)。あるいは成長に付きものの苦労をほんの少し後回しにするという点で、子どもたちにとっては良いことなのかも。まあ、正解は誰にも分かりませんけどね。

現在リグーリア州を含むイタリアのいくつかの地域では、子どもの成長のために教育と自然とを機能的に調和させた新しい幼稚園が登場しています。
北欧から伝わってきた流れを汲み、自然の中で教育を行うこの園は、「森の中の幼稚園」を意味する「asilo nel bosco(アジーロ・ネル・ボスコ)」と呼ばれています。デンマークやドイツなど北欧の国々では、実際こうした学校が一般的です。
ここで体験できる教育の特徴は、天気が悪い時でも野外活動を中心に行っている点。これらの幼稚園は「悪い天気などない。ただ服装が悪いだけだ。」というのをモットーのひとつに掲げているほどです。

イタリアのプリスクールは公立か私立のいずれかを選べますが、どちらの場合も義務教育ではなく、入園後の出席も義務付けられてはいません。
公立園への申し込みはどの家庭も可能ですが、受け入れられるかは各家庭の収入によります。所得が低いほど入園できる可能性が高くなりますが、両親が共働きであるか否か、申し込んだ園の近くに住んでいるかどうかなど、その他の要因も加味されます。
公立園では、1クラスに大抵20~25名の子どもと約2名の教員がいます。食事はバウチャーで支払うことができ、昼食にはケータリングサービスを使うのが一般的ですが、これは多くの場合「あまりおいしくない」と言われています。
私立の場合は園によって様々です。前述の「森の中の幼稚園」や修道女が運営している宗教系の園もあるし、私立の教育機関にはバイリンガルの園もあります。
私立園は1クラス10名以下の少人数制で、通常専属の教員がクラスに1人ついています。
ほとんどの場合、シェフが園内で調理した、おいしい食事が提供されます。
うちの息子も、私たちの意向で私立園に通っています。6人のみの少人数制なので、まるで小さな家族みたいです。さらに息子はベジタリアンなので、こちらの希望に応じて毎週、彼のためだけのメニューを作ってくれるんですよ!
学費だってイタリアの標準から見てもそれほど高くなく、アメリカの15分の1ほどで済んでいると思えるほどです。
公立でも私立でも大抵のプリスクールには庭や中庭のような屋外スペースがあって、天気が良い日には子どもたちは野外でたっぷり遊べます。

修道女たちが運営している宗教系の園はあまり厳しくなく、宗教色が強すぎるという感じでもないのですが、食前の祈りや宗教詩の暗唱、カトリックの主な祝日に向けてイエス様をモチーフにした工作を行ったりします。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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