散歩道や漁師が住む家が並ぶネルヴィのように有名な村もあれば、ジェノヴァっ子さえほとんど知らないような場所もあるのです。
マーケットのあるカルミネ地区(Quartiere del Carmine)は、その後者に属する隠れた名所。
ここはジェノヴァの中心地でありながら、色彩と静けさに包まれて別世界にいるような気持ちになれる場所です。
旧市街や港エリアの名所からもほど近いロケーションも魅力です。
このあたりはとにかく静かで、緑に恵まれていて人通りも少なく、明るい色で美しく塗装された典型的な家々が立ち並ぶエリアです。
絵のように美しく、静かな路地を歩いていくと、カルミネ市場(Mercato del Carmine)に到着します。
この名称は、リグーリア州の首都にある広場に由来しています。
1920年代に建てられた、錬鉄とガラスでできたアールヌーヴォー様式の建物の中にある屋内市場ですが、この建物がフランスの美しいアールヌーヴォー建築にそっくりなのです。この建築様式はイタリアではあまり一般的ではないものの、優雅さと繊細さを持ち合わせていて、この界隈に完璧にマッチしています。
カルミネ市場は、何年もの間荒れ果てて廃墟と化していましたが、ジェノヴァの若手建築家グループがより合理的な空間構成と低環境負荷を実現すべくリノベーションを行い、自然換気システムや床下設置型の温水式暖房システムなどが導入されて再開に至りました。地元の農産物の販売、地元特産品の価値向上、そして職人のサプライチェーンがこの市場の主な「構成要素」です。加えて、閉店直前には売れ残り品を競りにかけ、日持ちしない生鮮食品を安価で販売するなどして、食品ロスを抑えることにも注力しています。
場内には来場者のために椅子やスツールが設置されているので、市場で販売されている商品をその場でいただくこともできます。
市場には果物や野菜の店、チーズ店、コールドカットと呼ばれる肉製品を販売する精肉店、地元産ワインを扱うワインショップ、鮮魚店、さらには深夜まで営業しているバーレストランまであって、季節の食材を使った伝統料理を味わうことができます。
ショーやコンサート、本の紹介といったイベント用エリアも併設されています。しかし、数年かけて修復された建物とは違って、カルミネ市場の存在を知る観光客はあまりおらず、ほぼ地元の人たちのたまり場みたいになっています。
カルミネ市場が再オープンするのは、これが2回目。前回は経営不振のため、失敗に終わったのです。
市場の隣には、地元の牧場から届けられた生乳が購入できる自動販売機が置かれています。設置以来、新鮮な乳製品に対する需要が高まったため、チーズやバターなどの新たな商品も追加されています。
野菜と果物の販売カウンターでは試食もできるため、商品の新鮮さを味わってから購入する商品を選ぶことができます。
そのほか、テイクアウト用のスムージーや搾りたてジュースも提供しています。
併設のレストランでは、お隣にある売り場で肉や魚を客に選んでもらい、それらを使って本格的な郷土料理を提供するという野心的な試みも行っています。さらにお好みのパスタとソースを選んで、その場で調理してもらうこともできます。
ここのレストランは、とりわけ春に行くのが最高です。天井から差し込む太陽光を楽しめますし、ガラス張りの屋根のために温室のようになる夏場ほどは暑すぎないからです。
チーズ売り場
イタリアの美食マーケットの典型のようなこの市場では、商品を購入するだけでなく、地元の特産品をその場で、しかも夜遅くまで食べられるのが最高ですね。