• 2024.06.21
  • ブログ リグーリア‐甘くて古い伝統
ジェノヴァにある「ロマネンゴ(Romanengo)」は、ジェノヴァの菓子職人の家系が8世代に渡って営み続けている老舗の菓子店です。
1780年の創業以来、このイタリア最古の菓子店は、名だたる職人たちによって経営されてきました。
この店が提供する伝統的な砂糖菓子はもちろん、果物の砂糖漬けやプラリネ、甘いペストリー類は街を代表する遺産のひとつに数えられています。
長きに渡り、サヴォィア家やイタリアの作曲家ジュゼッペ・ヴェルディなど数多くの有名人や貴族たちが足を運んだことでも知られています。


ロマネンゴの店内

数年前にフランスのある実業家が参画し、この名高い菓子店の共同オーナーになっていますが、店の伝統は昔のまま変わっていません。
これはジェノヴァのスウィーツを世界に向けて広めるための動きで、まもなく製品の輸出も可能になるそうです。
この街に古くからある店はロマネンゴだけではありません。ジェノヴァの路地には、精肉店やトリッパ(臓物)店、菓子店、スキアマッデ(薪の窯を使って焼き上げる、昔ながらのフォカッチャの店)、さらには宝飾品店など約60軒が「歴史的店舗」として市や商工会議所から保護認定を受けています。これらの店は、いずれも70年間以上途切れることなく営業を続けています。開業当時の道具が今でも稼働しており、アンティークな内装や18世紀から19世紀にかけて建てられた建築様式などもそのまま残されています。
これらの店舗は一年中営業していて誰でも訪れることができますが、“ㇿッリ・デイズ(Rolli Days)”と呼ばれる期間はお店を開放して訪問者に秘密を教えてくれる、いわゆる舞台裏公開ツアーのようなイベントも開催されます。
ロッリ・デイズは、ユネスコの世界遺産に登録されているジェノヴァの貴族の館を色んな日程で訪れ、普段とは異なる角度からジェノヴァとこの街の宝を知ってもらおうという、文化的な取組みです。
期間中は、歴史ある商店を訪れて商品の製法や保管方法を見学したり、代々店を営む家族について学んだりすることもできるのです。



ロマネンゴのエントランスとファサード

ロマネンゴは世界大戦を生き延びただけでなく、狂乱の20年代には経営者一家がジェノヴァの主要駅近くに小さな工場を立ち上げ、前述のとおり今も独自のお菓子を製造し続けています。現在は街の中心部に3つの店舗があり、海外への出店計画も進行中なのだとか。
このお店のペストリー類は、伝統的にアラビアの影響を受けているのが特徴です。実際、ジェノヴァには港があり、地中海とのかかわりが強かったため常にアラブの影響を受けてきました。
ロマネンゴでは、南イタリア産の新鮮な果物だけを使った砂糖漬けや、ドライフルーツも製造されています。
そして、ヨルダン産アーモンドを使ったお菓子も名物です。伝統的なレシピで作ったアーモンド・ドラジェ(糖衣菓子)ですが、工場生産のものとは比較にならない独特の風味と香り、歯ごたえが楽しめる逸品です。
ロマネンゴの強みは、伝統あるレシピと斬新さとの融合にあります。
彼らのお菓子は日持ちがするにもかかわらず、歴史あるレシピを踏襲し、保存料は一切使用せずに製造されています。
ほかにも、ジャムやマーマレード、シロップのほか、アーモンドやピスタチオ、松の実、オレンジピール、珍しいところではシナモンの樹皮を使ったドラジェも製造しています。また、ロマネンゴの職人たちは当初は南米やアフリカからしか輸入されていなかったカカオに精通してチョコレートのスペシャリストとなり、ユニークなチョコレートやプラリネを生み出しました。私のお気に入りは、ホワイトチョコレートのトリュフ、メレンゲ、栗のクリームのペストリー、そしてイースターの時期限定で提供される四旬節のビスケットです。
最高の素材だけを使い、伝統と季節ごとの恵みを敬い、旬の果物を用いて作られるお菓子たち。
これぞまさに、口福ですね!

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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