• 2024.07.10
  • ブログ リグーリア‐みんなで一緒に楽しむ「シェアード・ディナー」
イタリアにはこんな歌詞の曲があります。
『テーブルの席をひとつ増やそうよ、もう一人友達が来るからさ。椅子をちょっと動かしてくれたら、みんなで気持ちよく過ごせるね。』
この歌は、ほんの数週間前にジェノヴァで開催された、とあるイベントのBGMに選ばれていても良かったかもしれません。
そのイベントとは、5月にジェノヴァの歴史地区に2,000名を超える人々を集めて開催された「シェアード・ディナー」です。このイベントのために、プレ通りからサン・ジョルジオ広場まで、現在の旧市街を構成するプレ、マッダレーナ、モロの3つの地区を跨ぐようにして巨大なテーブルが設置されました。
イベントの内容はきわめてシンプル。食べ物を持参できる人は自分の料理をテーブルに並べて同じテーブルに座った人とシェアする、持ってこなかった人も席に着いて一緒に食事をする、というもの。料理や飲み物はもちろんですが、あらゆる障壁や偏見を超えて和気あいあいと食事を楽しむことこそがこの夜の主な目的です。
今年は、昨年カンポ通りだけで行われたこのイベントをさらに進化させたシェアード・ディナーとなりました。歴史地区にある各協会やクラブ、委員会の尽力と、地方自治体や個人からの支援により、今年はさらに奥深いルートにまでテーブルが設置されました。


様々なルーツを持つ人たちがイベントに参加

それでも、用意されたテーブルは十分ではありませんでした。予想を上回る人が参加を希望したため、イベントは満員御礼となり、無料だったにも関わらず座席を予約することができない人がいたのです。
コミュニティーの一員として、ただシンプルに夕食を分け合うことから信じられないほどのエネルギーが自然と湧き上がってくるなんて、とても素敵なことですね。イベントの運営を手伝った人から参加した人まで、あらゆる人のおかげでほんとうに素晴らしい時間を過ごすことができました。
ジェノヴァは偏見やイデオロギーという壁のない街であるべきですし、そうなれると思います。私たちは皆、「調和しながら生きる」ことを願っているのですから。
このイベントは、長年に亘り街を活気づけようと尽力してきたジェノヴァ市と、コミュニティーで組織された各協会のネットワークとが連携して取り組んだ成果であり、人々の中から自発的に生まれた素晴らしい祝祭と言えるでしょう。
ある夜にこの歴史地区を訪れると、まるで時代とともに失われた人々の賑やかな暮らしぶりを偲ばせる、古い中世絵画に迷い込んだような気持ちになりました。


頭上には平和を訴えるポスターが掲げられている

席はすべて予約制で、参加者は家から食事を持ち寄ります。手抜きをしたい人やディナー直前まで働いていた人は、大急ぎで買ったテイクアウトのピザや野菜のパイを持参していました。イベントが始まると、隣の友人たちや別テーブルの見知らぬ人と自慢の品を交換し合うのです。
テーブルは大きいものでは約1kmにもなり、まるで昔の村のお祭りさながらです。
残念なことに、歴史地区の一部では麻薬の取引が行われたり強盗事件が発生したりしていますが、この土曜の夕暮れには、社交の場の噂を即座に聞きつけて興味をそそられた多くの観光客も参加していました。


家族連れで参加する人たち

この界隈は多文化社会ですから、様々な民族の人々が多数集まり、ご近所さんや初めて顔を合わす人たちと郷土料理を分かち合っていました。
老若男女、あらゆるタイプの人が楽しそうに参加しているのを見て心が和みました。きっとまた来年もこのイベントの開催が提案されることでしょう。
その時には、より多くの人が友人やこの場で知り合った人たちとともに、持ち寄った食事を分け合えるように、テーブルがもっと長くなることを願ってやみません。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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