• 2025.08.19
  • ブログ・リグーリア―沢山の本と月桂樹とおふざけに満ちた卒業式
卒業式は世界中のあらゆる場所で非常に重要な節目と考えられています。ですが、それをどのようにお祝いするかは文化によって驚くほどに違います。アメリカでは帽子を投げ、太平洋の島々では伝統的なフラワーレイを贈ります。どの国でも長い年月に亘り勉学に励んだこと、そしてその人の成長を、特徴的な方法で褒め称えます。
以前、私はアメリカに住んでいて、そこで大学の卒業式を迎えました。
アメリカでは、卒業式のことを「新たな門出(Commencement)」と呼ぶことが多く、フォーマルでありながらとても感動的で、様々な想いが詰まった印象的な式となります。卒業生たちはトーガ(toga)と呼ばれるガウンをまとい、タッセルのついた角帽(mortarboard)を着用します。ガウンは黒であることが多いですが、肩にかけるストール、飾り紐などの装飾は、学生がどの学問分野を修めたのか、成績優秀者として表彰されたのか、名誉団体などに所属しているのか、などに応じて変わります。例えば、色付きのストールや特別な飾り紐は学業での功績、あるいは学生団体や名誉団体への所属を表しています。多くの卒業生は、角帽に励ましや感謝の言葉、イラストや模様を自由に書き込んで、大学生活を象徴するこのアイテムを自分らしくアレンジします。
卒業式は大学の学長や主賓の祝辞とともに開会します。主賓には、著名人や著名な卒業生、政治、経済、文化の分野で活躍するリーダーが招かれます。
そして、待ちに待った瞬間はタッセルの儀式です。卒業が宣言される前はタッセルを角帽の右側に垂らしておくのですが、卒業が宣言されるとそのタッセルを左側へと動かします。その直後に、学業を修めた喜びを表して、卒業生たちが一斉に角帽を空に向けて投げるという、あの伝統的な光景が見られるのです。このように、アメリカにおいて卒業式は学業成就を祝うだけではなく、新たな門出を祝うとても象徴的で感動的な式典です。
イタリアでも、卒業式はただの学業のゴールではありません。厳粛な雰囲気の中で執り行われる公式の卒業認定と、学生たちが代々受け継いできた、賑やかなお祝いムードの伝統が融合した、まさに人生の通過儀礼なのです。卒業式は厳かな雰囲気の中、大学の講義室などで行われる口頭試験で始まります。卒業候補者たちは、審査員の前で卒業論文を発表し、口頭試問の後、候補者が学位を取得したことを宣言する厳粛な式文が読み上げられ、卒業認定を受けます。卒業生は退室するとすぐさま、家族や友人による拍手喝采、紙吹雪と祝杯で熱烈に迎えられます。それだけではありません。一番大切な瞬間は月桂樹の冠をかぶる儀式です。卒業生は、カラフルなリボンや小さな飾り、ユーモアたっぷりの献辞で飾られた、知識と勝利、そして一人前の大人になったことを象徴する月桂冠を戴くのです。
月桂樹を栄光の象徴として用いる風習は古代に由来します。ローマ人にとって、月桂樹は神聖な植物であり、芸術の神であるアポロ神に捧げられていました。アポロ神は知恵と知性、名誉の象徴とされ、ありとあらゆる形での勝利のシンボルでした。
イタリア語で学位を意味するLaurea(ラウレア)がラテン語のlaurel(月桂樹)を起源としていることにも納得がいきます。卒業生の頭を月桂樹の冠で飾ることは、まさに就学中に習得得した学問の戴冠式であると言えるでしょう。


イタリアの花屋では、卒業式用の月桂冠を好みに合わせてオーダーできます

ジェノヴァの卒業式は、千年も続く権威ある伝統と、学生たちが持つみなぎる活気が交錯するひとときです。
特徴的な伝統のひとつが、ポスターサイズの巨大クロスワードパズル作りです。親戚や家族、友人、学友が卒業生の個人的なエピソードや大学時代の思い出にまつわる「定義と解答」をユーモアたっぷりに書き出します。また、卒業生のちょっと恥ずかしい写真をコラージュして卒業試験会場や街中に張り出すといういたずらもよく行われます。
そのほか、奇妙なコスチューム姿の卒業生が花吹雪やスパークリングワイン、小麦粉などを浴びながら、賑やかな掛け声とともに街中を歩く姿も見られます。

卒業式には、それぞれの物語があります。眠れぬ夜、乗り越えた試練、思わぬ発見、そして友情や喜び、生涯忘れることのない思い出が詰まっています。厳かな式であれ、広場での即興パーティであれ、卒業生はそれぞれ、様々な感情と意味を心に抱いてこの日を迎えます。国によって伝統は違っても、卒業式が祝福されるべき人生の大きな節目であることに変わりはありません。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

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