• 2025.09.29
  • ブログ・リグーリア―介護施設? それとも自宅介護?
今回は前回に続き、年金と福祉をテーマにしたブログの第2弾です。
イタリアでは、年を重ねる過程で避けて通れないもう一つの課題があります。それは、自宅で介護士にお世話になるか、それとも介護施設に入居するかという問題です。
イタリアと日本は、平均寿命の長さや高齢者の人口の多さにおいて、世界のトップクラスです。
それ自体はとても素晴らしいことですが、高齢者はちょっとした転倒などの些細な出来事がきっかけで、生活が大きく変わってしまうような厳しい状況に陥いることもあります。ある日突然、子どもたち(お子さんがいらっしゃらない場合はお孫さんたち)が、高齢者に対する最善の対応方法を考えなければならない立場に追い込まれることもあるのです。

例えば、親が大腿骨を骨折した翌日、病院の廊下に子どもたちが集まり、「どうするのが一番いいのだろう? 介護士を探す? それとも介護施設に入居させる?」と話し合っている場面は、典型的な光景です。
簡単に答えを出せる問題ではありませんが、子どもたちは突然、大切な家族に継続的なサポートと絶え間ないケアが必要となる状況に直面します。
最も理想的には、家族による介護を受けて、高齢者が住み慣れた環境で過ごすことです。これは自宅での介護を意味し、私はこれがおそらく高齢者にとって最も望ましい方法だと考えています。実際、環境の変化が大きな負担となることも少なくありません。
年齢を重ねることで、五感(特に聴覚と視覚)の機能が衰え、人との関わり方や身の回りの環境に対する安心感も低下します。そのような変化によって混乱が生じ、精神的なバランスを崩す可能性もあります。
当然ながら、在宅介護は専門的なトレーニングを受け、資格を取得した介護士によって行われることが必要です。衛生管理や各利用者に合った適切な介護、食事の準備などをきちんと行えるだけでなく、高齢者との良好な関係を築き、家族とも信頼関係を結ぶことができる人物でなければなりません。
知人の紹介で介護士を見つけるのが理想的ですが、それでも認定資格証明や前の家庭からの推薦状、場合によっては犯罪経歴証明書を確認することが大切です。
一方、高齢者向け介護施設は、フレイル、すなわち心身が衰えた高齢者や、社会的な事情により自分で身の回りのことができなくなった人たちを受け入れるための施設です。「フレイル」には、病気の急性期は乗り越えたものの、一人ではその後の回復管理が難しい高齢者も含まれます。高齢の患者は、急性疾患により、これまで普通に一人で生活できていた状態から突然衰弱することもあります。
あくまでも個人的な意見ですが、施設入居という選択肢はケースバイケースで考える必要があります。なぜなら、施設に入居した途端に激しく気分が落ち込み、その結果、死期を早めてしまう高齢者もいるからです。一方で、周囲の人たちと交流することで新たな人生を歩み始める人もいます。社会的な刺激が多い環境に適応し、生き生きと暮らし始める方もたくさんいるのです。慣れ親しんだ環境から離れることで気分が落ち込むこともありますが、介護施設が刺激的なアクティビティを提供することで、生まれ変わったようにはつらつとした生活を送る人もいます。
家族はいつまでも家族ですし、家もいつまでも我が家です。それは変わりようのない事実であり、年を重ねるごとに家族や家に対する思い出や愛情は深まっていきます。

金銭面の話をすると、介護士を雇う場合は、雇用形態(給与、特別手当、有給休暇、退職手当など)を整備し、専用の部屋や食事を用意するとともに、介護士が休暇を取る際に備えて代理の介護士を確保する必要があります。入居する施設や部屋の種類によって差はあるものの、自宅で介護士を雇って介護する場合も、介護施設に入居する場合も、毎月の費用はおおむね同程度になります。

運営面では、自宅介護の場合、介護士が休みの日には代わりの人を手配する必要があります。また、場合によっては契約が途中で打ち切られることもあり、その際は新たな介護士を探さなければなりません。一方、介護施設では24時間体制の介護が保証されています。経営者が無理な運営をしない限り、継続的なサービスが保証されているので、家族は安心して介護を任せることができます。

特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申( さる )
  • 性別女性
  • 職業翻訳、通訳、教師

生まれはイタリアですが、5ヶ国語が話せる「多文化人」です。米国、ブラジル、オーストラリア、フランス、イギリスで暮らし、仕事をした経験があります。イタリアと米国の国籍を持っていますが、私自身は世界市民だと思っています。教師や翻訳の仕事をしていない時は、イタリア料理を作ったり、ハイキングをしたり、世界各地を旅行したり…これまで80カ国を旅しましたが、その数は今も増え続けています!

パトリツィア・ マルゲリータの記事一覧を見る

最新記事

おすすめ記事

リポーター

最新記事

おすすめ記事

PAGE TOP