これまでの投稿でもお伝えしてきたように、オレゴニアンはかなりのアウトドア派で、余暇に自然を探索するのが大好きな人々です。オレゴンは雨が多いため、アウトドアの活動に
向いていない天気の日が多いのですが、それでもオレゴンの人たちは小雨ぐらい降ってもまったく気にしません。逆に、豊かな自然をもたらしてくれるオレゴンの湿潤な気候に感謝しているぐらいです。この緑豊かな州のすばらしい自然のひとつであり、この地域でキャンプをするのに最適な場所といえば、オレゴン州南西部のカスケード山脈に位置するクレーター・レイクです。これはマザマ山と呼ばれる休火山のクレーターに雨水が貯まってできた湖で、濃い青色の水をたたえ、水深がおよそ590メートルにもおよび、全米一深い湖として知られています。地質学者らによると、マザマ山が激しい噴火でマグマが枯渇したために崩れて、そこに空のカルデラができ、クレーター・レイクが形成されたそうです。
湖は国立公園になっています
アメリカで最も青く深い湖
観光客や自然を愛する人々の名所になる前、この地域一帯は長い間クラマス族というアメリカ先住民が住んでいました。彼らは、この湖の色鮮やかな青い水を見ると、永続の悲しみを引き寄せてしまうと信じています。この湖にまつわる最もよく知られている伝説は、黄泉の国の神スケル(先住民たちによると悪魔)と天国の神ラオという神話上の2人の神が登場するもので、基本的には善と悪の対決の物語です。クラマス族の伝説によると、いまクレーター・レイクと呼ばれているこの神秘的な場所に宿ってきた精霊は、ラオという善の神です。善の神ラオが、悪の神スケルを打ち負かしたときに崩壊でできたクレーターを自らの涙で満たして、この湖ができたと伝えられています。ラオの姿は、ウィザード・アイランドとして知られる、湖面からそびえ立つ円錐型の孤島に重ね見られ、この島にはいまでもラオの魂が宿っていると考えられています。
ウィザード・アイランドは神の住処(すみか)であると考えられています
この地域は今は国立公園になっておりますが、宿泊施設はなく、毎年、多くの観光客や地元の人々がここでキャンプをしています。いまもなお聖なる場所であることに変わりなく、ここではこの地域の動植物の生態が保全され続けていくでしょう。一方で、この不気味で神秘的な場所は、数々の不可解な失踪や、霊との遭遇、想像上の生き物の舞台となっており、多くの言い伝えがあります。 ラオが多くの精霊や動物たちを操っていると信じられており、そのうちのひとつ、湖の底に棲んでいるとされる巨大な竜は崖の上まで登ることができて、ここを訪れた招かれざる訪問者を連れて行ってしまうと考えられています。この誘拐犯の竜は、おそらく湖に生息する巨大なザリガニかサンショウウオでしょう。
東側の断崖には、ラオ・ロックという北に向けて少しばかり傾斜している平らな岩礫(がんれき)地があります。ここは、クレーター・レイクの伝説上の生き物たちの住処です。一方、悪霊スケルは、クラマス族の土地の一部分で、尖峰(せんぽう)が特徴的な場所を住処としているとされてきました。クラマス族はいまもこの湖を聖なる場所ととらえており、平和と善の精霊、そして火と闇と恐れの精霊が行きかう場所だと信じているのです。