• 2016.09.27
  • 広域な都市ネットワーク
ポートランドは都市開発において公共輸送の向上に常に力を入れており、おかげでダウンタウンは活気溢れる文化的な街の中心地となりました。ミーティングに遅れたくないとき、ポートランドではタクシーを呼ぶよりも、はるかに速い公共交通機関を利用するのが得策です。ポートランドの住民は、清潔で、確実で、速いという理由から、街中の移動にバスやトラム(路面電車)やライトレールといった交通手段を日常的に活用しています。

電気運転で走行するポートランドのライトレールは、ダウンタウンから近郊まで80キロメートルを超えるエリアを網羅しており、駅は80か所以上もあります。そのため、ポートランドは公共交通機関という点において北米の都市開拓モデルになりました。ポートランド近郊はライトレールが走っているだけでなく、高速道路の交通量を抑えるため、また多くの住民が利用できるように、駅周辺において最新の開発が行われてきたという特徴もあります。

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市民はポートランドの公共交通機関をとても誇りに思っている

開発プロジェクトを推進するために、ライトレール網を管理する公共輸送会社のトライメット(TriMet)は、経路沿いの土地を購入し割引価格で開発業者に販売しました。開発業者らは、低予算住宅から高級分譲マンションまで幅広い種類の共同住宅やテラスハウスを建設しました。店舗やショッピングモールの建設がそれに続き、小規模な近郊都市が出来上がっていったのです。ポートランド周辺のモールはたいがい公共交通機関に直結していますが、このようなモールはアメリカの他の都市では見られません。

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ポートランドのライトレール、マックス

このような開発は高速道路の爆発的な増加による大規模な公害に歯止めをかけるために、1970年代に始まったものです。当時、環境保護派や農家らが、高速道路建設のための資金をライトレール・システムの開発にまわすよう連邦政府を説得したことで、ポートランドのライトレール、マックス(MAX)の開通が1986年に実現しました。また、オレゴン州は都市成長境界線法を施行し、州内の自治体に都市のスプロール現象の抑制と開発規制を課しています。

1.5キロにおよぶダウンタウン・エリアにおいて、公共交通サービスは長年、無料で提供されていましたが、市議会は財政危機を理由に、数年前に無料サービスを終了しました。1975年に可決されたこの無料政策は、数十年にわたってダウンタウン・エリアの観光産業を活性化し、ビジネスを支え、この政策が功を奏してパール地区全体は再生しました。

ダウンタウンには、路面電車であるトラムも走っています。トラムはパール地区からダウンタウンを抜けてサウス・ウォーターフロントと呼ばれるリバーフロントまでを結んでいます。トラムはより多くの駅で停まり速度も遅いため、バスやライトレールよりも歩行者交通を増やすのに理想的な乗り物だと言えます。また乗りながら観光を楽しむこともできます。

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ポートランドの路面電車、トラム

もうひとつの革新的なプロジェクトは、公共輸送エリアに住宅とオフィス、そして店舗の3つの用途を持ち合わせた建物の建設に力を入れたことがあげられます。店舗は一階に、オフィスはその上の階、そして住居をさらに上に設けたもので、このようなモデルでは、徒歩やバス、トラムでの移動が促進され、人が集まり、地域が活気づきます。こういった建物はヨーロッパや日本では当たり前かもしれませんが、車と車道をベースに作られているために住宅街とビジネス街が別々になっている都市が多いアメリカの西海岸においては実に画期的です。

2050年を見据えて、トライメットは「歩ける街」というコンセプトをさらに拡大し、運行圏内のどこでも、徒歩20分以内でトライメットにアクセスできるようにしたいと考えています。ポートランドの人々は長期的展望を持っていて、より住みやすく好ましい街作りのためにあらゆる面で努力をしているのです。


特派員

  • パトリツィア・ マルゲリータ
  • 年齢申(さる)
  • 性別女性
  • 職業翻訳者、編集者、教師

米国とイタリアに住んでおり、両国に深いルーツを持っています。広く世界を旅する中、日本で4ヶ月を過ごし、桜とたこ焼きに恋をしました。現在、世界中の友人からレシピを集め、料理の本を編集しています。

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