さて、ファティマの奇跡ですが、1917年5月13日、羊飼いの3人の子供の前に聖母マリアが現れます。それから毎月13日に子供達は聖母に会い続け、その間様々なメッセージ・予言を託されるのです。最後の出現となった10月13日、様々な超常現象が、聖母を一目見ようと集まった7万人以上の群衆の前でも起こります。これらを一般的にファティマの奇跡と言います。ファティマの予言は、大きく分けて3つありました。死後の地獄の実在、大戦争の終焉と勃発、そして「ファティマ第三の予言」とされる最後の予言は、1960年まで秘密にするように言われますが、2000年になってやっと、内容を伝えられていた教皇庁から公開。1981年5月13日に起きたヨハネ・パウロ2世の暗殺事件だと発表されます。しかしそれは、他の二つの予言内容と比べるとあまりにも軽い事、読んだ教皇らが絶句し、40年もの間発表を見送った内容にはとても思いえない事から、未だに疑問視されているのです。
このようなオカルト現象は、科学者がこぞって証明しようとするもので、ポルトガル内でも科学的に説明する特集が組まれるようになりました。中でも司教(D. Carlos Azevedo)までが、本人が執筆した本「ファティマ:羊飼いのビジョンから、キリスト教のビジョンへ」の中で、聖母マリアの「出現」ではなく「ビジョン」であると、指摘しているのが興味深い。本書では、実際起こった事は、先見者の心、思考、感受性、想像力が生み出した「内部の知覚」と書かれています。しかしそれは、この神秘的な現象を否定しているのではなく、そのビジョンそのものが奇跡と解釈する方が今の時代に合っているからだと。そして彼は説明します。我々は、そのビジョンが嘘か誠かを判断するのではなく、それがもたらすメッセージ・動機を理解する事が重要なのだと。