• 2017.09.19
  • 一杯のカフェ

ポルトガルでカフェ(コーヒー)を注文すると、日本で言うエスプレッソコーヒーが出てきます。
値段は一杯100円以下で、その香り高いこげ茶の液体を「くっ」と口の中に流し込んでから、一日が始まります。

あまり知られていませんが、ポルトガルのコーヒーは、イタリアと並んで世界一と言っても過言ではありません。
それは植民地だった、ブラジル、アンゴラ、モザンビーク、カーボ・ヴェルデ、サントメ・プリンシペ、ギネ・ビサウ、ティモールからコーヒー豆を輸入し、ブレンドの基礎を早々と開発できていたからではないでしょうか。

更に、美味しいエスプレッソコーヒーをいれるには、豆以外にもう一つなくてはならないものがあります。それは、エスプレッソマシン。
細かく挽いたコーヒーに、機会でお湯を通し短時間にギュッと抽出する事により、うま味を引き出すことができます。その圧力が高いほど、瞬時に抽出でき、雑味のないコーヒーに仕上がるのです。
高圧のエスプレッソマシンにはポルトガル製も存在し、一時は世界シェア一位だったこともあるそうです。

こうした事をベースに、ポルトガルのカフェ文化は古くから根付いており、ポルトガル人にとってカフェはなくてはならない存在なのです。

一杯のカフェから様々な生活の背景が見えてきます。
カフェを前にテスト勉強をする学生。食後の満腹感を落ち着かせてくれるカフェ。カフェを手に永遠と続く常連の会話。行きつけのカフェで、注文する前から出されるおなじみのカフェ。飲みの締めとして飲むカフェ。親交を深める為のカフェ。店長に近所の情報を得る為に注文するカフェ。忙しい一日から解放される為のカフェ・・・。


また、ポルトガルのカフェには多様な淹れ方があるので、いくつか紹介したいと思います。
●Bica→リスボンでのカフェの呼び方。「Beba isto com açucar」の各頭文字をとったもの。
  意味は「これは、砂糖を入れて飲むべし」で、当時の人々にとって、コーヒーがいかに苦かったかを連想させる。
●シンバリーニョ→ポルトでのカフェの呼び方。当時のエスプレッソマシン(La Cimbali)の名称にちなんでいる。
●アバタナード→ティーカップに注がれる、お湯で薄くしたもの。アメリカーノでも通じる。
●イタリアーナorビカ・クルト→二口くらいで飲み干せてしまえる量のカフェ。
●ビカ/カフェ・シェイオ→普通の量よりも多めに注がれているカフェ。
●カリオカorビカ・フラーカ→出がらしで抽出したカフェ。
●カフェ・コン・シェリーニョ→直訳は、香り付きカフェ。普通のカフェにブランデーやスピリッツ系のお酒と出される。
●メイヤ・デ・レイテ→カフェオレ。 ティーカップに注がれる。
●ガロート→デミタスカップのカフェオレのようなもの。ガロートは、少年を意味する。
●ガラォン→普通の量のカフェにたくさんのミルクが注がれている。グラスで出される。
●ピンガード→エスプレッソに、一滴程のミルクをたらしたもの。
*ミルク入りカフェは、クラーロ(薄い)・オスクーロ(濃い)という言い方で、カフェの量を注文できる。また、マキナ(機会)と言わないとインスタントコーヒーをホットミルクで混ぜたものが出たりする。
●マザグラン→アイスコーヒー。日本のとは異なり、普通のコーヒーと、氷とレモンの輪切りが入ったグラスを出される。自分でコーヒーに砂糖を入れ溶かし、それをグラスに注いで冷たくして飲む。ポルトガルでは、アイスコーヒーはレモンを入れて飲むらしい。

ポルトガルにいらした時は是非、一杯のコーヒーから旅を初めてみて下さい。

写真:ガラォン

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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