• 2020.07.27
  • ウイルスよりも怖いもの
世間が新型コロナウイルス感染症で騒ぎ出した時、「なんか、争いごとにならないといいけどな。」と漠然と考えていた。

得体の知れないウイルスにかかるのは恐ろしい。
でも、ウイルスよりももっと怖いものがある。以前にも書いたが、それは、私たちの心の奥にある「恐怖」だと思う。

我々は、情報の溢れた世界に住んでいる。誰でもSNSなどで情報を発信できる時代にある。
目の前の情報が本当に正しいのか見極めず、また情報源の確認をせず情報はどんどん広まっていく。悪いニュースと間違った情報によって膨れ上がった恐怖が人間を乗っ取って、デマと憎悪を拡散し、人を差別し攻撃するようになるのではないでしょうか。

今ポルトガルでは、コロナウイルス感染者の増加に伴い、7月1日から事態の深刻度に応じ,市民保護法に基づく宣言を地域毎に発動する旨決定しました(市民保護法では深刻度の低い順に「警戒事態」,「緊急事態」及び「災害事態」の3段階のレベルが設けられています)。
対象地域を確認すると、低所得地域、移民、外国からの出稼ぎ労働者が多い地域に集中しています。
私の住むマフラ市では、コロナウイルス感染者が出始めた当初、その多くがブラジル人でした。理由や彼らの背景を理解せずに結果だけに注目してしまうと、「ブラジル人=コロナ」のような、大きな誤解を招かざるえません。
実はロックダウン前のリスボンでは、日本人の友人たちがレストランでお客に嫌な顔をされたり、ショッピングセンターですれ違いざまに、子供を脇に寄せ、自分のコートで覆って守る人がいたそうです。
アジア人は見た目で判断しやすいので、さぞかし避けるのも楽でしょうね。

ロックダウン中の出来事ですが、スーパーに行くと、シリコン手袋、マスク、割烹着姿の完全防御の女性Aがいました。その女性Aは、ショッピングカートをうまく操作できず、小さな植物の種が並ぶダンボールの棚にぶつかり、その衝動で種の袋が棚と一緒に倒れ、辺りに散らばりました。女性Aの数十センチのところに別の女性Bが「店員を呼びましょう」と女性Aに声をかけましたが、女性Aはパニックになっているので、すかさず種の袋をかき集め、拾い始めたのです。
2人の女性のすぐ近くに立っていた私は、その時どうしようかと悩んだのです。普段なら、直ぐに一緒に拾ってあげたでしょう。でも、完全防御の女性Aの隣に、マスクもしていない私が寄り添ったら、不愉快がられると不安がよぎったのです。しかも、私、アジアン。
女性Bはというと、親切に一緒に拾ってあげていました。
私は、この時一体何をすべきだったのか、非常に複雑な気持ちになり、その夜は良く寝付けなかったのは、いうまでもありません。

これからは、人への親切、優しさを示す方法が180度変わるでしょう。それでも無関心でいるのが普通になって欲しくない。悲しい友がいたら、やはり抱きしめてあげたい。
そのためには、やはり、流れてくる情報をなんでも信じてしまうのではなく、(コロナの事で言えば)感染を広げないために、自分がすべきことは何かを良く考えて、責任を持った行動をするのが大事なのだと思います。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 年齢丑( うし )
  • 性別女性
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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