• 2020.10.19
  • サッカー選手になる素質
サッカーがポルトガルの国民的スポーツであるのは、間違いありません。
ポルトガル(ヨーロッパ)の男性が、我が子がサッカー選手になることを自分の夢のごとく想像するのは良くある事で、うちも私が男の子を身ごもった時、主人はまだ生まれてもいない息子のサッカー人生を計画し始めていました。
息子が生まれたのは、主人が応援するクラブがチャンピオンズリーグで優勝を果たした年。なんと縁起が良いんだ!と大喜びしたのは、言うまでもありません。

息子は小学校に上がる頃、この国のほとんどの男の子がするように、近くのサッカークラブに通うことになり、主人は頑張って週二回の練習に連れて行きました。なかなか帰ってこないと思えば、自分も中学生の選手と一緒になってサッカーをやってたいり、コーチが別チームの試合で忙しい時は自ら代わりのコーチをしていたほどの気合いでした。
週末になると、試合に連れて行くのも主人の役目。息子が試合に出ている時は、大声を張り上げます。
不思議な事に、ポルトガル人お父さんは、あまり騒がないのです。争い事を好まない国民性でしょうか、息子の活躍にもじっと観客席から見守ります。
ちなみに主人はスペイン人なのですが、彼が息子に対して怒鳴りまくると目立って仕方ありません。主人の他にもう一人、同じように熱いお父さんがいました。その人はアルゼンチン人です。
田舎のちびっこチーム同士の試合で、この二人のお父さんがスペイン語で騒ぎまくる様子は、異様なものでした。

しかし、しばらくしてこのお父さんたちの夢は崩れる事になります。アルゼンチンの子はサッカークラブを辞めストリート系のスポーツを始めました。そして、我が息子も・・・と言うよりも主人の方が息子の様子を見ていて諦めたのです。
息子は体が小さく、シュート力はないものの、ミッドフィールドで、すばしっこい走り、ドリブルを披露し、ゴール近くの仲間にパスするのが得意でした。ですが、性格が優しすぎて、相手チームの子からボールを奪うのに躊躇してしまうのです。ましてや、相手や仲間を試合中に誤って蹴り、傷つけるのを恐れます。


さて、娘の女友達は、ポルトガルの名門サッカークラブに所属しています。
小さい時からクラスの男子よりもサッカーが上手く、才能を発揮していました。必ずサッカーボール、ゴールキーパーがつけるグローブを持っていました。そしてお誕生会で集まっても、ずっと男子と混じってサッカーをしていました。10代になる前、スカウトされ、リスボンにある名門クラブで週5回の練習に参加する事になりました。5時半くらいに学校を終えた後、リスボンでトレーニングです。学校の宿題をやるのは夜10時頃になります。10代初めの女子にはハードな生活でも、彼女はそれが楽しいと思えるほど、サッカーが好きなのです。
彼女が小さい時、母親が唯一「お願いだから辞めて欲しい」と注意した事があると言いました。それは、ベッドでサッカーボールを抱いて寝ないで、と言う事だったそうです。彼女にとって、サッカーボールはきっとどんな人形よりも愛おしく、またそこまでサッカーを好きでなければ、プロのレベルには到達できないのだと私は感じました。
彼女は11、12歳の時、アンダー14のチームに加わり試合に出るほどになり、現在はアンダー16のチームで活躍しています。
一昨年はドイツの有名クラブからお誘いがあり、去年はスペインの名門クラブからも話があったそうですが、結局彼女はこの地に残りました。
「家族とも友達とも離れたくない。今いる大好きなクラブで一生プレーするの。」
13歳の彼女は、白くて大きな歯を見せて笑いながらそう話すのです。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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