1位は、なんと日本のカレー。「伝統的?」と、なんともツッコミどころ満載の料理ではあるが、それには目を瞑って、2位はブラジルのピカーニャ、そして3位にはポルトガル料理がランキングされていた。
3位に入ったポルトガル料理は、Amêijoas à Bulhão Pato (アメイジョアシュ アブリャォン パト)という名のアサリ料理で、にんにくとオリーブオイルでアサリを蒸し(白ワインを少量入れるとこもある)、そこにレモンを搾りいれ、最後に香菜を振りかけていただく前菜である。パンをちぎって、それをアブリャォン パトのソースに浸して食べると、うまいの、なんの、笑ってしまいたくなるほど美味しいのだ。にんにくの効いたオリーブオイルにアサリの出汁が混ざっているのだから、そりゃあもう間違いなく、もはや主役のアサリをよけてまで、パンにたっぷりこの汁を染み込ませたいわけである。パンの追加オーダーは当たり前、ついでにビールも、そして気づけば「もう腹いっぱい」という落ちだ。
この料理名の由来はと言えば、19世紀の詩人Raimundo António de Bulhão Patoにちなんで付けられている。彼の提案料理ということではなく、初めてこのアサリ料理を作ったリスボンのホテル料理長がこの詩人のファンであり、敬意を表すために彼の名を料理につけたらしい。この詩人は美食家としても知られており、実際彼の本にもこの料理長の名前が出てくるらしい。
Wikipediaより
続いて25位にはCarne de Porco à Alentejana(カルネ デ ポルコ アレンテジャーナ)という、マリネした豚肉とアサリをワインと一緒に炒めて煮込む、ポルトガルのアレンテージョ地方の料理が入っていた。この料理は、元々ポルトガルの南のアルガルベ地方の伝統料理という説もあるが、黒豚(イベリコ)が有名なアレンテージョにレシピを取られたのかもしれない。
また、この料理には非常に興味深い歴史があり、それはポルトガルに於けるユダヤ人迫害の時代、隠れユダヤを見つけ出すために、元々はアサリ料理だったものに豚肉を加えるようになったのがきっかけで、今では誰もが好きな人気料理である。
ユダヤ関連で言うと、ポルトガルのFarinheira(ファリネイラ)は、豚肉の代わりに小麦粉やパプリカなどで作った詰め物であり、ユダヤ人はこれを軒下に干して自分達の身分を隠したそうです。こうして料理を歴史と関連づけてみると興味深いと思う。
さて、ポルトガル料理、あと2品ランキング入りしている。
34位、Frango assado com piri piri(ピリピリローストチキン)
89位、Leitão de Bairrada(バイハーダの子豚ロースト)
前者は、オリーブオイル、調味料、ピリピリ(唐辛子)ソースを開いたチキンに絡めて炭火で焼くローストチキン。アフリカ料理のピリピリチキンと関連しており、ポルトガル人がアンゴラやモザンビークなどの海外植民地から帰国した際に、地元の食材と一緒に持ち込み、作られるようになったとされる。
後者は、主にどんぐりで育てられている子豚に、ラード、ニンニク、塩こしょうをこすりつけ、ユーカリを燃料とするオーブンで調理したもの。子豚は長い棒の串に刺されてローストされるのだが、出される時には食べやすい大きさにチョップされ、フライドポテト、オレンジスライス、サラダが添えられる。皮はパリパリで、肉は柔らかく、クリーミーと言う表現がふさわしいのではないか。これに黒胡椒のタレをつけていただくのだが、ほっぺたが落ちるとはこのことか舌鼓を打つほどである。子豚ローストに合わせる飲み物は、エシュプマンテ、いわばスパークリングワイン。肉料理には赤ワイン、魚料理には白ワイン、魚介料理にはグリーンワイン、そして子豚にはスパークリングワインで、これまた相性抜群なのである。
人数が多いと、子豚のまま出てくるのだが、口にオレンジが咥えられているのが少々切ない。
世界ランキング100の中に4品も入っているとは、かなりすごいと思うが、ポルトガルにはもっともっと美味いものがたくさんある。陸と海と暖かい太陽がある国は食が潤うのであろう。