• 2023.11.28
  • 白いゴースト
真っ白なウナギがポルトガル南部、ポルト・コーヴォ漁港で発見された。
普段は、西太平洋、インド洋、西インド洋、沖縄諸島の方に生息するウツボの仲間で、最高長さ103センチにもなる、全身真っ白なうなぎである。アルビノではなく、突然変異で起こる白変種らしい。
学名は「Pseudechidna brummeri」、一般名称は、ブルマー・ウツボ・うなぎ(Brummer moray eel)、ホワイト・リボン・うなぎ(White Ribbon eel)、ゴースト・うなぎ(Ghost eel)などがある。
ホワイト・リボンは、ふりふりと海の中を優雅に泳ぐ姿が即座に連想できる、綺麗で分かりやすいネーミングだと思う。
しかし、海を泳いでいる最中に、白くて長いものに遭遇した状況を想像すると、ゴーストうなぎの方がしっくりくるのではないか。

日本では(アジアでは)古くから、白い生き物は幸運を呼ぶ縁起ものとされてきた。白虎、白蛇、白梟などが挙げられる。また、西洋での代表的な白い生き物は、平和の象徴である白鳩がある。
白い生物は、珍しいゆえに神聖なものとして捉えられるのだろうが、見慣れていないというのは、逆に奇妙で気味悪い印象も与える。

私は、キューバ滞在中に、12歳でスキューバーダイビングを初め、ダイビング装具が整ってない中、ある意味サバイバルな潜りを何度か経験している。
海の泡になったような気分や、海の神秘に溶け込んだ心地や、死を覚悟した瞬間などの貴重な体験の数々の中、海の生物をゆっくりと観察できるのはダイビングの醍醐味だと思う。静けさの中、カラフルな魚と一緒に泳いでいる時の私は、きっと人魚になっていたはずだ。

そんな自惚れ絶好調の時に、真っ白なうなぎに遭遇したものなら、
「あらまぁ、白リボンちゃん。こんにちは。」なんて気持ちでいられるのかしら?
ラッキーと思うどころか、きっと全身鳥肌になって、我にかえらざるを得ないかもしれない。私なら。
白うなぎを「ゴースト」と名付けた人が正解で、どうぞポルトガルで繁殖しないでください。


10月に、世界最高齢の犬として歴史に名を残したボビが亡くなった。約31歳で、人間の200歳以上に相当するらしい。
周りの友達のペットも、ここのところ15年以上で亡くなるケースが増えてきている。
私が寿命のことを意識した子供の頃は、犬は12年ほどで猫は14年ほどの命だったと思うので、長生きになったのは、人間だけではないようだ。ニュース映像でのボビは長齢であってもしっかりと自分の足で歩いているし、アレンテージョ地方特有のゆっくりとした生活を送り、ボビは幸せだったであろう。
しかし、長寿であっても必ずしも豊かな生活があるとは限らないのがほとんどではないか。質のある生活どころか、普通の毎日が送れないのは辛いことだと思う。それは人間もしかり。
いきなり糸が切れたように亡くなる人もいれば、常に寝たきりで何もできない病人も多く存在する。
ここ最近、健康志向な世界になってきているが、少しでも自分の生命を伸ばすために頑張るのか、仕方なく年老いた時に備えるものなのか、健康でいるためのゴールが私の中で曖昧になってきている。
いずれにせよ、命とは自分ではコントロールできないもの。寿命とは不思議なものである。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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