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ポルトガルでは、各町の中心に市場が存在する。今風に言えば、地元のファーマーズマーケットで、規模は様々だが、八百屋、魚屋、肉屋、花屋はどこのマーケットでも必ずある。
先週末、マフラ市の依頼で、音楽学校の高学年がクリスマスキャロルをマーケットで披露した。
実はこのマーケット、リフォームされてからまだ日が浅く、マフラ市もプロモーションに力を入れているのだろう。
私がマフラ市に住み始めた頃のマーケットは、この写真のようであった。
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なんとも殺風景な空間に、店と店との境なく野菜や果物がみっちりと詰み並べられている。肉屋の商品は、写真の豚の頭や、皮を剥いだうさぎ、皮がない山羊の頭、子豚など、姿が分かるようなものが多かった。壁に並べられている道具は、なんと恐ろしいのだろう。
それが今では、こんなにも綺麗な変貌を遂げた。
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偶然なのだが、写真に写っている八百屋のおばちゃんは、同一人物で、しっかりと歳を重ねているのが、時代の流れを感じさせた。
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昔の垢抜けていない野暮っぽい方が、味があっていいと思うのだが、今の方が全体的に明るくなったのと、木材を活かした建築デザインは清潔感がある。また、自然の材料を使うことによって素朴さを残し、並んでいる商品をより引き立たせている。ポルトガルの近代化に淋しさを感じつつも、全体との調和が取れたリノベーションなら、納得できると思った。
この新マーケットの大きな変化は、カフェができたこと。まだ一度も体験してはいないが、ここで定期的に地元シェフの料理デモンストレーションが行われているらしい。
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コーラス隊は、マーケットの正面でも一曲歌い上げた。路上スピーカーからのクリスマス音楽、通行人、通行車、強いて言えば、市場のおばちゃんたちの大声に邪魔されながらも無事に役目を終え、解散となった。
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この道を登っていくと、マフラ中心の、マフラ宮殿・修道院がある。貴重な所蔵書が保管されている図書館のある宮殿と、6つのパイプオルガンと二つの塔の鐘が有名な教会・修道院が一つになった建物だ。
クリスマス時期なので、プレゼピオやクリスマスツリーが設置されており、街はクリスマスモードで賑わっていた。
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この日の収穫は、マフラで取れたユーカリの天然ハチミツ。味見をさせてくれたのだが、いつも買っているmultifloral(多種の花)やローズマリーハチミツよりも深い味がする。独特な味わいに思わず声を上げると、
「もっと濃い味が好きか? これを試してご覧」
と、差し出されたスプーンには、栗の花のハチミツが乗っていた。まるで松脂を熟成させたかのような色と質感のそれを舐めてみた。濃厚だ。それだけでない、舐めた瞬間にむせたくなるような癖がある。率直にいうと、だめだ、全く口に合わなかった。
ユーカリハチミツ1キロ瓶を抱き、ハチミツをたっぷり垂らした料理を色々とイメージしながら、次回は爽やか味のオレンジ花ハチミツを購入すると、唾を飲み込んだ。
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