• 2025.07.07
  • AIが神になる
AIの進化が加速し、人間の知能をこえる「シンギュラリティ(技術的特異点)」が到来するとされ、シンギュラリティが起きる年は、一般的に2045年と言われている。
AI能力は約5~6ヶ月ごとに倍増する驚異的ペースで進んでいるとされており、私の日々の生活の中でもAIの存在は無視できないものとなっている。映画やゲームで見たような世界がどんどん当たり前となってきている。
私は、子供の頃からSFが大好きで、画面上や本などで見るSF世界に憧れを持ちつつ、テクノロジーの進化を好意的に感じていた。将来、子供たちがヒューマノイドの友達を連れてくるのを楽しみにしていたほどだ。
しかし、AIが進化し、夢にまで見たSF世界が近づくにつれ、その存在に恐怖心を覚え始めている。私のちっぽけな頭では理解できないような時代が来るのは承知の上だが、私たちは、もはや「何が本物か」を見分けることができなくなる可能性に、最も不安を感じている。
ディープフェイク、偽りの情報、音声合成など、今や疑いようのないクオリティで作ることができる。フェイクニュース、合成映像、AI生成の意見などがネット上で普通に出回っていて、こうしたAIによって作られた現実が人々の認識を支配するようになってきている。

そもそも、我々が存在する資本主義の世界も偽りでしかないと私はずっと考えていた。
真の豊かさは、誰にでも平等に手の届くところにあるのに、私たちは、ものに溢れた世界、紙幣と呼ばれる紙切れに頼り、リーダーや世論を信頼するという現実に生きてきた。それが、テクノロジーの進化によるリアリティの変化、また不確かである現実が生まれたことにより、私たちは、西洋社会が作り出したバブルに閉じ込められており、それが幸せだと信じさせられていたのだと気づき始めている。
だが、こうした価値観が生み出した「現実」とAIが作り出す「現実」は異なるものだ。AIの進化は、「現実」というものの定義を根本から揺るがすものだと思う。AIは、私たちの注意力、感情、選択を精密に分析し、脳をハッキングし、現実の感覚を操作する。私たちは、自由意思で行動しているようで、すでにアルゴリズムに選ばされた現実を生きることになるのだ。要するに、今までのように共通の現実や価値観をシェアするのでなく、各々の現実のパーソナライズが進むということ。恐ろしいのは、よりフェイクな現実が、よりリアリティを持って存在して行くことだと思う。

私は母に、人を信じるように言われてきた。そして物事を素直に受け入れ、疑うことのないように育てられてきた。そんな母は必ず、電卓を叩いて出た数字を、右手の指で空気算盤をはじいて再確認している。
私は今、母の教えに背き、情報を鵜呑みにせず、常に批判的な視点を持つことをチャレンジされている。そして、母に学び、自分の五感を通して得られる経験を大事にし、現実を理解する必要があると思っている。

特派員

  • 太田めぐみ
  • 職業修復士、通訳、コーディネーター/Insitu(修復)、Kaminari-sama、ノバジカ、他

ポルトガル在住の保存修復士。主に、絵画(壁画)や金箔装飾を専門にし、ユネスコ世界遺産建築物や大統領邸の内部を手がける。シルバーコースト近くの村で、地域に根付いた田舎暮らしを満喫している。趣味は、土いじり。

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