• 2017.07.20
  • ハイランドゲームズ、それはスコットランド最古の伝統
スコットランドの最強アスリート勢に地元のコミュニティ、そして世界中から観客を集めたら、いったい何ができると思いますか?答えはそう、あの有名なスコティッシュ・ハイランドゲームズです!

縄投げから丸太投げ、泥レース、トラックやフィールドを使った試合まで、歴史あるスポーツ競技を取りそろえた圧倒的スペクタクルであるハイランドゲームズは、スコットランドで最も長く続いているイベントのひとつです。さらに魅力的なのは、それらの熱戦の舞台になるのが、スコットランドらしさに溢れるハイランドの原野であるという点です。

170711patrick_s1
スコットランドの原野がハイランドゲームズの舞台


ゲームが開催される時期は?

スポーツと娯楽と文化が、文字通りスコットランド的に一体化したハイランドゲームズは、5月から9月の夏の間、ほとんどの週末に行なわれます。エリア内の島や都市部、村落や各施設では、実に80以上のハイランドゲームズが実施されているので、そのうちのどれかを見に行ってみましょう。中にはお城を使って行なう種目もあったりして、そんな競技の舞台効果と言ったらもちろん、それこそ圧巻のひと言に尽きます。

170711patrick_s2
試合が多いのがハイランドゲームズの特徴


そもそもハイランドゲームズとはどんなもの?

古い起源を持つハイランドゲームズは、出場者の力の強さを披露し合う場としての意味合いが主なものでした。強さを測るテストとは、重いハンマーを使った重量投げや、丸太を転がしながら丘を上り下りする競争などのことで、一方、荒地を自転車で何キロも走破したりするものは、耐久力のテストになります。
昔ながらのハイランドゲームズは、完全なスコットランド式スタイルで、スポーツと娯楽と文化を融合したものです。中でも代表的なのが丸太投げで、その昔、谷の向こうに丸太を放り投げていたことにヒントを得て考案された競技だと言われています。現在では、距離ではなく投げるスタイルが採点基準になっています。選手はキルトを身にまとい、12時の方角をめがけて最大70ポンド(約30キログラム)の丸太を投げます。飛距離はまったく評価の対象になりません。
ハイランドゲームズの世界記録は常に更新されていて、昨年に関して言えば、インヴァネス地方のヘビーウェイト・アスレチック選手権で、最も多くの丸太が一斉に投げられたというギネス世界記録が樹立されました。この時は、キルトを着たアスリートが160人以上出場し、66本もの丸太投げに合格判定が与えられました。

その昔、氏族の者たちが互いに争い合っていた時代は、チームはすなわち氏族を意味しました。氏族(親族の係累)がかつてほど重視されない現代において、競技における氏族の存在は、儀礼的・社会的価値の象徴です。ハイランドゲームズのいくつかは、氏族の大人数の集まりという側面があり、パレードやスコットランド民謡、宴会、伝統行事なども含めて、スコットランドの家庭には大切な祝いの場でもあるのです。

近代オリンピックの祖、ピエール・ド・クーベルタン男爵がハイランドゲームズに感銘を受けたことから、オリンピック競技大会の種目にハンマー投げが採用されたことを、皆さんはご存知でしたか?
今もオリンピック競技大会の正式種目であるこの競技は、ハイランドゲームズの中でも人気の高いプログラムの一つです。

ハイランドゲームズの中で最高に盛り上がる場面と言えば、複数の楽団が一堂に会し、何百ものドラムとドラムスティックが一斉にマーチングの音を響かせる瞬間を挙げる人も多いはず。スコットランドが誇る素晴らしい楽器であるバグパイプがこの大会にとって重要な存在であることも、もはや説明する必要はありませんね!

170711patrick_s3
大会の主役たるバグパイプとキルト


大会では、ダンサーがソードダンスや典型的なハイランド・フリングダンスなどのスコティッシュダンスを披露します。カラフルな衣装を着たダンサーたちがパワーを発散させながら、個人および団体として順位を競い合うのです。英国内および世界規模の選手権に出場するレベルのアーティストたちが、世界中からこの大会のために集まって来ます。

ゲームもスポーツも、数百年も昔から、スコットランド文化の中の大きな要素でした。11世紀、マルコム3世が直属の臣下となるべき最速の走者を選ぶためにブレイマー山麓のレースを開催したのが、ハイランドゲームズのそもそもの始まりだという説もあります。私たちが知っている今の近代版ハイランドゲームズは、1800年代以降スコットランド全土で愛され続けていて、多くの人々を動員する一大イベントなのです。



特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 年齢酉年(とり)
  • 性別
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

パトリック・ サッコの記事一覧を見る

最新記事

おすすめ記事

リポーター

最新記事

おすすめ記事

PAGE TOP