• 2018.01.10
  • フォルカークのケルピーたち
今日はこのブログで、スターリングで働いていた頃に出会った不思議な場所について少しお話したいと思います。ある日、スターリングからの帰宅途中、私はフォルカーク郊外にある有名なスコットランドのケルピー像を見に行きました。それは厳かで静かなところで、非常に感銘を受けました。空気は澄み渡っているし、なんとも言えない魅力に満ちた場所でした。
ところで、ケルピーとは何でしょうか?
一見したところ、金属製の2頭の大きな馬の彫像、それがケルピーです。
写真では愛くるしい白馬の彫像が2体並んでいるように見えますが、実際のところ、我がスコットランドでは、ケルピーはケルト民話に出てくる悪霊だと古くから言われています。
事実、ケルピーは伝説によれば、スコットランドにある湖や川に棲み付いている、変幻自在の水性の魔物です。魔法の使い手なので、人間・植物・動物と、思いのままに姿を変えることが出来るといいます。
警戒心の薄い不運な旅人たちをかどわかした挙句、湖の底に沈めて悲惨な運命に陥れることがケルピーたちの狙いです。

スコット作のケルピーたち



スコットランド、そして怪物と来れば、誰もが最初に連想するのはネス湖の怪物ことネッシーですが、スコットランドの湖にまつわる伝説やケルト神話に出てくる魔物も多くいます。

馬の姿をしたケルピーの背中に乗ってしまったが最後、人間は2度とそこから降りることはできなくなります。犠牲者はケルピーの背に文字通り「貼り付け」状態となり、とうてい逃げられないほどの強い力で捕まってしまいます。
馬の姿をしたケルピーはそのまま湖水の中へと入って行き、そうしてこの魔物は哀れな人間の息の根を止めるのです。
この伝説の生き物ケルピーを象った2体の巨大な彫像が見られる場所はフォルカークの近くにあり、グラスゴーあるいはエディンバラからも車を飛ばして1時間もかかりません。
彫刻家のアンディ・スコットによるこのモニュメントが初お目見えしたのは、2014年のことでした。
スコットランドのフォルカークにあるフォース・アンド・クライド運河を見下ろすようにそびえ立つステンレススチール製の2つの頭部は、ケルトの伝説上の生き物であると同時に、スコットランドにおける産業や経済のパワーの象徴でもあります。事実、作者のスコットは、スコットランド原産の馬クライズデールの外見を彫刻に取り入れることでパワーとエレガンスを表現しようとしました。スコットランドの産業および経済の象徴としてのパワーとクライズデールのようなエレガントさの両立を目指したのです。クライズデールは、かつて荷馬車や農具を引いてフォルカーク地方の土地を作った、スコットランドの大型馬の血統を象徴する存在です。グラスゴーからこの地に連れて来た2頭のクライズデールをモデルとし、ステンレススチールのコーティングを施して作られたのが、この2体の彫刻なのです。



像の中を見学することも可能ですが、何と言っても圧巻なのは外観そのもの、外から見上げたときの姿でしょう。
重厚さを漂わせる2体の彫刻は、馬の彫像としては世界最大、高さ30メートルで重さ600トンという、2つの世界記録を持っています!ヘリックス公園の中、湖とは反対側にありますが、私は念のため水のほうには近付かないようにしました…用心には用心をと言いますからね!
このあたりからは、フォース・アンド・クライド運河とユニオン運河を結ぶ高さ35メートルの世界で唯一つの回転式水圧ボートリフト、フォルカーク・ホイールにも車で行くことができます。

フォルカーク・ホイール

この見事な大物が建つ前にあった11もの閘門(水量調節用の堰)は、1930年代に取り壊しとなりました。
暗くなってからケルピーの像を見たことがないのであくまでも聞いた話ですが、夜のケルピーは巧みな照明を浴びてリアルに輝き、最高に見ごたえがあるとのことです。

特派員

  • パトリック・ サッコ
  • 年齢酉年(とり)
  • 性別
  • 職業エリオット・コンサルティング社エンジニア

こんにちは! 私はパトリックと言います。スコットランドのエジンバラ在住で、土木技師をしています。趣味は詩を書くことです。9年ほど前にイタリアからスコットランドへ移住し、この土地に惚れ込んでいます。雨の多い気候を好まない人もいますが、その気候のおかげでここは緑豊かな風景に恵まれています。暇を見つけては、車でエジンバラ郊外へ湖や渓谷を見に出かけています。

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